2018年11月30日

音楽の「中」へ、音楽の「外」へ

当ブログは2013年5月に始まりました。そもそもはDTMがはかどらない私なんくいが
見切り発車的に始めたブログなんですが、徐々に色んな企画を始めるようになって
きています。その方向性を要約すると、この記事のタイトルになります。

私はDTMerを志している(ちょっと開店休業状態ですが・・・頑張ります)こともあり、
音楽の作りかについては一応それなりの知識はあります。その知識をオープンにする
という目的で、音楽理論などの記事を書いてきました。しかし、これはブログで記事を
書くことで分かってきたことですが、音楽を作るという目的以外にも音楽理論に需要が
あるようなのです。つまり、音楽をより深く理解するために音楽理論が助けになる。

私はそもそも、音楽を作ることと聴くことを分けたくないと思っています。もっと気軽に
音楽を「作る」とまではいかなくとも、その手前の行為に親しむようになってほしいと
思っていますが、それは段階的に進めるべきだろうなあとは考えています。ただ、
音楽理論などで、好きな音楽をより深く「理解」しようとする試みは、その一歩に
なると思っています。

そんな私の思いを今回「音楽の「中」へ」という言葉で表現してみました。人が音楽を
気に入る時は、その音楽の中に入り込むことが出来た時なのではないかと最近思います。
この詳細はいずれ書きますが、音楽の「中」に入り込むことを助けるコンテンツを充実
させたいなあと思います。

それと同時に、音楽の「外」へも目を向けたいと考えています。自戒を込めて書きますが、
音楽好きは音楽を社会から独立させて考えるクセがあると思います。しかし、音楽を
初めとするエンタメコンテンツは、社会と独立して存在することは出来ません。

ですから、私達の好きなものを守るためにも、音楽の「外」にあるものにも関心を向けて
いきたいなあと考えています。と言いつつも、地に足をつけることも大事。音楽好きに
とって、音楽と社会との接点で問題になる主たるテーマは「著作権」と「表現の自由」の
2つのテーマだと考えます。これらについても、このブログの大きな柱として記事を
書いております。

そういう趣旨で展開しているブログです。末永くよろしくお願いいたします。
posted by なんくい at 00:00| Comment(0) | あいさつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月02日

素材としての宮本浩次

これこれ、こういうの待ってたんだよ!というニュースが立て続けに
発表されたので、紹介そして妄想を少々という記事です。

先ず9月末に発表された衝撃のニュース。
スカパラ新曲「明日以外すべて燃やせ」でエレカシ宮本とタッグ!「長年の夢でした」

スカパラのコラボについに宮本先生登場! いや、これやってくれないかなあと
ずっと思ってたんですよね。ただそれはスカパラ側も思っていたみたいで、今回
長年の念願がかなってコラボ実現、なんだそうです。しかし、まだタイトルしか
公表されていませんが、そのタイトルからして名曲決定!でしょう。

と思っていたら、昨日の深夜に重ねて大ニュースが!
椎名林檎「獣ゆく細道」コラボ相手はエレカシ宮本、ヤバさが刻まれたMV公開

こちらはもうMVまで公開されているんです!!



椎名林檎さんは最近コラボが目立ちますよね。もともとJポップを非常に批評的に見ている
方で、おそらく「この人をこういう風に使いたい」というアイデアは他にも山ほど持って
おられるのでしょう。トータスとのコラボでは紅白にまで出てますし、今後何が飛び出すか
楽しみですね。

エレファントカシマシはこれまで、宮本さんの音楽表現を担う唯一の場として機能して
きました。宮本ソロという選択肢もあり得たけど頑なに拒否してきた。そのことに価値を
感じつつも、こういう客演という手があるのではないか、とはずっと思っていました。
バラエティでは素材としていじられることが多々あるけども、音楽的に素材として
「いじられる」宮本さんも聴いてみたい。それが今回、立て続けに始まったわけです。

しかし今回のスカパラも椎名林檎さんもコラボ強者、というか両者とも化学反応という形で
コラボ相手を批評的に取り上げるという形で実績を残してきた方々。そりゃあ腕も確か
ですし、コラボが上手くいくのは予想できます。音楽的にもビッグバンド的というのも
共通してます。(エレカシでそういう曲少ないですしね)なので今後は、もう少し違う
方面からのコラボがあると面白いのではないか。ということで、ここからは私の妄想で
宮本さんの将来のコラボ候補を列挙していきます。

先ずコラボと言えばHip Hopなんですが、これは宮本さんと釣り合う相手が意外といない
んですよ。順当にいけばライムスターなんでしょうけど、これは双方に必然性を感じない。
(ライムス&サンボマスターならありそうだけど) 男気というキャラで言えば般若さんとか
漢 a.k.a. GAMIさんとかも考えましたが、その路線ならBLUE HERBの方が聴いてみたい
ですね。ただ彼らはあまりそういう他流試合はしなさそう。

とか色々考えて、私が宮本さんのコラボ相手として挙げたいのがtofubeats。ありきたりかな?

エレカシのある曲(のMV)を意識してのこのチョイスです。

圧倒的にコラボ強者ですよね。それに、打ち込みサウンドと宮本さんとの相性も意外といい
のではないか。その辺を引き出してくれそう。

次に、私が強烈に推したいのが、岡村靖幸さん。


この人は素材の人と取られがちで、上のこいちゃんとのコラボは素材としての岡村さんを料理した
風なんですが、意外とプロデュース能力を持っている人だと思っていて。エレカシとはトリビュート
アルバムで「孤独な太陽」をカバーしていますし、宮本さんへの理解度も高いのではないかな。

電子音関連で言えば、この人とのコラボも聴いたみたい。まりんこと砂原良徳さん。

(貼れる音がなかったのでMETA FIVEです。あ、メタファイブに客演も面白い!)

私がチョイスするのは独特の批評眼を持っている人ばかりですね。そしてその切り口を作品を
通して味わってみたい、という愉しみなんですね。

というふうに色々楽しめるのではないのでしょうか。この展開、エレカシにどう還元されるかも
楽しみですが、素材としての宮本さんに魅力を感じて、こういう仕事が増えるのも大歓迎です。
posted by なんくい at 11:15| Comment(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月30日

洋邦楽理解説・温故知新#9 RYTHEM「万華鏡キラキラ」

洋邦楽理解説、奇数月の邦楽は、このブログ初登場のRYTHEMです。実は一時期、
すごく好きだったんですよ。2ndアルバムまでの彼女達は神がかっていたと今でも
思いますね。その辺、是非聞いて確かめて頂きたいです。

RYTHEMはデビュー当時女子高生の二人組で、曲を自分達で書き、二人のボーカルも
メインがひんぱんに入れ替わったりするなど、まさに新世代というにふさわしい
シンガーソングライター・グループでした。何よりも二人の作る楽曲が独特で、
その哲学的でかつポップな世界観が印象的でした。

今回取り上げる「万華鏡キラキラ」はドラマの主題歌になって彼女達の知名度を
上げた、代表曲の一つ。確か自閉症をテーマにしたドラマで、そのドラマのために
書き下ろした曲でした。そういう重いテーマを「心のつながり」というポップな
切り口で描いた歌詞は必読、ですけども今回は楽理解説ですので、あくまで楽理に
限ってこの曲を解説していくつもりです。

楽曲に関して言えば、aikoさんの影響がこういう形で若い子の血肉になっている
んだなあと聴いた当初驚いた覚えがあります。Jポップがこれまで生み出してきた
表現のエッセンスを上手に消化していることが、色んな楽曲を聴いてうかがえます。
では、早速内容に入っていきましょう。

先ず、イントロからいきなりボーカルパートから始まります。しかもサビとかでなく
イントロ独自のフレーズ(アウトロで少しだけリプライズされますが)で。結構
珍しいパターンですよね。「いつも強く願う/「心がのぞければいい」と」という
ドキッとするフレーズで始まるイントロ。これが冒頭から結構面白い展開を見せるのです。
先ずはコードを拾ってみましょう。

 |A♭maj7|Gmin7|Fmin7|E♭add9・Edim|
 |Amin7-5・B♭7/A♭|Gmin7・G♭6|Fmin7・Gmin7|A♭maj7・B♭|B♭|

いかがでしょうか。前半は1小節単位でコードが動くのですが、後半は2拍単位で
動く。ここでグッと世界が動いていくわけです。前半の4小節は四から三→二→一と
順次降りていくわりと普通の進行なのですが、4小節目の後半で、半音上の減和音を
はさんで、どこへ行くのかなあと不穏さを出して、そこから後半にいくわけです。
このEdimのコードが先ずキモですね。ここの部分はまだあまり後発のJポップで
真似されていないと思います。

そして後半の先ず2小節は、真裏のコードから半音ずつ降りていくという、わりとこの
ブログの楽理解説で定番のコードです。これを、この時期からやっていた。実際こういう
ユニークなコード進行を当時使っていたのはaikoさんとかぐらいだったですね。高野寛さん
も真裏から半音下がるコードは使っていましたが、三♭まで降りていくコードは使って
いなかったですね(三♭に降りるのは、あの崎山くんが「五月雨」のアウトロで使っていて
それをスカートの澤部さんが激賞した、あのコードです)

そして降り切った二から今度は三→四→五へと上がっていく、最初の4小節と逆の展開を
見せます。まあこの辺は定番なんですが、ここで最後の五の和音を6拍分伸ばして、結果
奇数小節になっている辺りも非凡なものを感じます。

メロディは、イントロでは割と自由な感じで描線を描いているのですが、前半の4小節
(ゆいさんのパート)では下降線のメロディが印象的で(3小節目の頭で7度に、4小節目の
頭では9度に当たるのが心地よい)後半の5〜6小節目は飛翔して最高音E♭へ上がるところが
印象的に聞こえるように作っています。ここはゆかさんの声質を生かしたつくりですね。
それでも、細かく見ると、その5〜6小節目のフレーズは、1〜2小節目と譜割りが同じで
描線も似た形を描いています。(厳密に同じわけではない)この辺、非常に音楽を分かって
いる人のメロディの描き方ですね。そして二人のユニゾン→ハモリへといくに従ってどんどん
上へ畳みかけていく展開で、そこからイントロの伴奏部分を迎えます。そこのコードは
こうなっています。
 |A♭maj7・B♭|Cm|A♭maj7・B♭|Cm|cm|

これはいわゆる四→五→六という典型的なマイナー展開ですね。ただ、B♭のところに4度の
E♭を絡ませたり、Cmのところにも4度のFや2度のDを絡ませたり、コード的には面白い
ことをやっています。そして六のコードを強調するように、ここでも奇数小節を用いています。

そしてAメロに行きますが、コード的にはイントロ歌パートと似ているんですよ。

 |A♭maj7|Gmin7|Fmin7|E♭add9・Edim|
 |Amin7-5・B♭7/A♭|Gmin7・G♭6|Fmin7・Gmin7|Csus4・C|

こうしておいて、メロディのパターンを変えている。そうすることで、バックのコードは
ユニークながらなじみのあるものに聞こえ、そこにメロディ(プラスハモリ)の面白みが
加わるように作っています。

ここでのメロディは、8分音符での刻み印象的な、わりと折り目正しい印象を与えるメロディ
なんですが、バックのコードとの絡みがユニークなんですよ。先ず最初のA♭のところは、
メロディの上のCは3度なのですが下のGは7度。次のGmのところも上のB♭は3度で
下は7度。というふうに下が不安定(色気)〜上が安定、というふうに当てている。これは
折り目正しく聞かせつつ、ひそかに色気を出すという意味では数多のポップ・マエストロが
用いている手法ですね。(このブログの解説でも結構出てきます)それだけでも心憎いの
ですが、さらにユニークなのがそのハモリ。ここでのハモリは、最初のG→Cというフレーズ
に対してC→Gとコード感を壊さないようにハモっているのですが、その結果メロディとの
関係が5度になったり4度になったり3度になったりする。特に上をたゆたうところで4度
になるのがユニーク。普通4度でハモらないですよ。ここで、心地良い危うさを与えている。

その構造は後半でもほぼ変わらないのですが、後半はコードが複雑に動くのでそこで効果が
変わってくる。特に5小節目のGからE♭に上がる跳躍は才気走っています。このE♭は
根音の真裏でこのコードのキモになる音ですが、これまで4度上がっていたのを6度にする
ことで、一番インパクトのあるところで、一番おいしいところへ行くのが「分かっている」。
実際、ここの部分が一番エモーショナルに聞こえるでしょう。そこからは少し不安定になる
(でも既視感はある。イントロで使っているコードだから)パートを経て、ここから二→三
ときて六に行く。それもサス4を経てメジャーに。副五(属にセカンダリー・ドミナントと
いう手法)で、次への推進力を増すコードですが、ここでそういうコードのユニークさを
導くのがなんとハモリのパート。ハモリがF→G→FときてEに落ち着く。RYTHEMはハモリの
自己主張が強い(ただのメロディの添え物でなく)というのがここに表れています。ここは、
音楽の素人でも非常に耳に残るところではないでしょうか。

そしてBメロ。ここは、コード的には普通です。
 |Fmin7|Gmin7|A♭maj7|B♭・G7inB|
二→三→四→五という上昇形で、そこから三のメジャー(これはサビ頭の六を導く副五)。
ここは王道的にサビへとつなぐ箇所、なんですが、ここでメロディが掛け合いになるわけ
ですね。16分音符で動くのですが、先ずポイントは始まるところ。最初のフレーズは1拍裏
から始まって2拍裏で終わり、次のフレーズは3拍表で始まり4拍表で終わる。ついでに
二人のハモリは4拍裏で始まり、次の小節頭で伸ばしになる。非常に目まぐるしく表と裏が
交錯するつくりになっています。そしてフレーズも2小節単位で同じで、コードが動くので
効果が変わる(前半の方が少し不安定に聞こえる。それも、緊張→緩和のセオリーを踏襲
していますね)という手法です。個人的にはGに行くのが好きですね。C→B♭→Gという
音形がユニークですし、特に最初がバックのFの9度。わざわざここに当てに行くセンスが
私好みです。

そして堂々たるサビです。ここのコードはこうなっています。
 |Cm・Fmin7|B♭・E♭・G7inD|Cm・E♭inB♭・A♭maj7|B♭・G7inB|
 |Cm・Fmin7|B♭・E♭・G7inD|Cm・E♭inB♭・A♭maj7|B♭・G7inB|

途中、4分音符単位でコードが変わる(2〜3小節の辺り)ので見にくいですが、非常に王道の
D進行(「いわゆる六→二→五→一。小室進行の変形ですね)で、メロディも最高音のE♭を
惜しげもなく使って、王道的に泣かしにかかります。ここでのミソは後半で五のコード(B♭)
からサビ前の三Mに行って切なさを増すところですね。そしてメロディは、次のイントロの
伴奏パートにまで延長します。このダメ押しもポイントですね。

そしてその伴奏パートは、ここでは5小節目を省略してすっとAメロに入ります。

2コーラス目も同様に進みます。そしてサビからDメロへのつなぎをここでは解説します。
(歌詞的には、2コーラス頭で一番好きな「人の手は悲しい人を包むためにある」という
フレーズが来ます)

1コーラス目には次の間奏のところまでメロディの伸ばしプラスダメ押しがあったのですが、
ここでは頭の音で素早く打ち切って次のフレーズに向かいます。コード的にはこうなってます。
 |A♭maj7|B♭|A♭maj7|B♭|
 |A♭maj7|Gmaj7|Fmin7・Gmaj7|6/4 A♭maj7・B♭・G7inB|

ここはある種の「じらし」のテクニックが堪能できる箇所です。イントロ伴奏部分と同じく
四→五に行くのですが、2拍交替でなく1小節交替になり、そこからなかなか六に行かずに
四→五を繰り返す。そして四から三に降り、二からの上昇形では二拍交替で畳みかける。
そして五から三Mに行くサビ前の展開では、ここでなんと4分の6になる。小節余らせで
なく、拍余らせ。(半小節分余らせるという言い方も出来る)そういう奇形なつくりになって
いるのが先ず一つ。そしてメロディはBメロの再現のようなつくりのメロディで、ただ16分音符
で動く箇所の裏と表が交錯するリズム面は同じですが、フレーズは同じ音形を2回繰り返す形。
しかも、コードが動かないからかメロディもそこの箇所は同じ形でひたすら押すんですよ。
その次の伸びやかなパートでは二回目にE♭への跳躍を見せますが。そして、最後の上昇形で
畳みかける箇所でやっとメロディが3度上をなぞる形をとる。溜めて溜めて、グッと畳みかける
この展開ニクイですが、さらにここでユニゾンから「だろう」のところが掛け合いっぽく1拍
ずれるんですね。そして伸ばしで4度のハモリ。歌的にも聞かせ処であり、歌詞としても
ちょっと結論めいたパンチラインを繰り出すところでこの工夫。空恐ろしいですわ。

そして最後のサビからイントロ伴奏部分へ。ここで一行返しっぽく「ありがとう」のフレーズを
2回連呼するようになっています。そして、余韻を残すように、イントロのフレーズの前半を
リプライズするのですが、ここで、最後のコードがE♭に行くところでCm(Fが加わって
少しサステインっぽくも聞こえる)に行って、不思議な余韻を残してこの曲は終わります。

いかがだったでしょうか。今回RYTHEMを取り上げようと思ったのには実は理由があって、
それは解散後、それぞれゾロでやっていた二人ですが、そのうちのゆいさんが「新津由衣」
としてのソロデビューを果たしたからです。大きな節目を刻んだ彼女の門出を祝う意味での
今回の楽理解説でもありましたが、新津さん(や元相方のゆかさんも)の最近の動向も、
近々記事にしたいと思います。ファンの方はお楽しみに。

来月の洋楽ですが、Gilbert O'Sullivanをやります。これからの季節にピッタシでしょ。曲は
もちろん「Alone Sgein」ここはヒネリなしで行きます。知らない人はいないと思いますが、
予習が必要な方は事前に聴いておいて下さいね。
ラベル:楽理解説 RYTHEM
posted by なんくい at 23:24| Comment(0) | 音楽理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする