2017年05月30日

祝30周年!エレカシの極私的30曲(19)あなたのやさしさをオレは何に例えよう

頑張って19曲まで来ましたよエレカシの極私的30曲。今回は小林武史さんが
関わった「ライフ」からです。

この時期のエレカシは黄昏期と言っていいでしょう。小林武史さんがエレカシの
センチメンタリズムに惚れ込んで、それを極限にまで引き出したアルバムだと
言うことが出来ます。「暑中見舞-憂鬱な午後-」というヘビーな曲もあるのですが、
アルバム全体としては「普通の日々」に代表される、透明なセンチメンタリズムが
色濃いアルバムでしょう。おセンチということで言えば、少し前に「愛と夢」と
いう名盤もありましたが、あれは混乱した中で染み出てきたおセンチで、それに
対して「ライフ」は澄み切ったセンチメンタリズムを感じます。もっとも、どちらが
良いという話でなく、その時々の必然があるんですけども。

あと「ライフ」というアルバムタイトルから想起されるのは、4枚目の「生活」
というアルバム。その当時は究極の隠遁期と言えますね。アルバム事態も非常に
ヘビーで、彼の当時の隠遁生活に至上の価値を見出すという趣のアルバム(そう
聞くととてつもなくおかしなアルバムと感じるかも知れませんが、文学の世界では
このテーマは定番ですから)で、その意味ではかなり異なるテイストのアルバム
ですね。あまり比較の材料にならないくらい。ただ、楷書的な「生活」に対し、
カジュアルな「ライフ」という対照は出来るかと思います。

その中で今回取り上げるのは、個人的にも大好きな「あなたのやさしさをオレは
何に例えよう」という、長いタイトルのナンバー。ブレイク期からのお得意路線
といってよい、ポップなナンバーです。ただ、ややテンポを落とした16ビートと
いう路線は、この後の楽曲では結構聞かれることになりますが、当時としては
新鮮だったと記憶しています。

そして、この曲の歌詞がまた独特で。「敗北と死に至る道が生活ならば/あなたの
やさしさをオレは何に例えよう」ですからねえ。宮本さん特有の、透徹された
ニヒリズム(「コール・アンド・レスポンス」辺りに通じる)が裏打ちされた
中で、どうポジティブなメッセージを発するか、というトライアルに成功している
曲だと言えましょう。あと、歌詞のオープニングも好きですね。「古い美術館に眠る
大切な宝物/夏の陽に照らされて 魔法が解けてゆくように」という。骨董が好きな
宮本さんらしいというか、そういった古き良きものを現代に蘇らせるという趣旨が
非常に的確な言葉になっていると思いますね。

そしてこの曲のチャーミングさを際立たせているのが、全編にフューチャーされている
ブラス。この後、「今はここが真ん中さ!」で、宮本さんとブラスとの相性の良さが
窺える曲も出てきますが、この曲では控えめなプロダクションでアルバムのテイストに
合わせている気がします。一度、ここのブラスを派手にやったバージョンも聴きたい
ですね。まあこれはこれでチャーミングな魅力を放っていますが。

この後のエレカシですが、再びバンド回帰しつつ、ヘビーな音像を求めていくことに
なります。
posted by なんくい at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月29日

サブスク時代の洋楽楽理解説 #16 Duran Duran「Lonely In Your Nightmare」

月末の恒例となりました洋楽楽理解説。こちらも温故知新的な色合いが強い
コーナーとなっております。今回はDuran Duran。完全に80sど真ん中ですね。
アイドル的な人気(当時の洋楽アーチストは女の子がキャーキャー言ってた
わけです。今でもワン・ダイレクション辺りにその名残がありますかね)を
誇っていたのですが、何ミーハー人気のアイドル・バンドだろと斜に構えていた
ガンコな男のリスナーもいつの間にか中毒になり・・・という厄介なバンドでも
ありました。

彼らの全盛期(となると1stから3rdの「Seven and the Ragged Tiger」辺りまで)
の音を聴くと、1stは結構地味というか暗いんですが、それが3rdになるに従って
ポップでるくなっていく。本格的にアメリカで売れるのは3rd(当時ブリティッシュ・
インベンションと呼ばれていた)なので、やはりポップな方が分かりやすいのですが、
彼らの神髄はその暗い中にも妙な魅力を放っている1stにあったりします。

彼らの1stアルバムを聴くと、まあニューウェイヴと名付けられた音楽性に分類される
音楽ですね。一応ニュー・ロマンティックスなんて名付けもされていますが。ところが
そんな中でもベースがファンキーなフレーズを弾いていたり、意外と音楽的に侮れない
ところがあるんです。乱暴に要約しておくと、イギリス特有の湿り気のある抒情性に
ニューウェイブ的なスクエアなビートに意外と黒人的な音楽の素養を感じさせるベースと
ギター(カッティングなんかにその影響を感じます)といった取り合わせの妙でしょうか。

今回取り上げる「Lonely In Your Nightmare」という曲は、2ndアルバム「Rio」に収録
されている曲です。「Rio」は1stよりやや明るくなった(Hungry Like the Wolf」のような
ヒット曲も入っていますし)過渡期的なアルバムで、アルバム全体としてのクオリティも
結構高い、結構聴きどころのあるアルバムです。最後の「The Chauffeur」に向けての
流れは今聴いてもグッとくると思いますね。

「Lonely In Your Nightmare」はその中でも非常に地味なミディアム・ナンバーでして、
ある意味1stのテイストを最も感じさせる曲かも知れません。何故この曲を選んだかと
いうと、個人的に好きな曲ということもありますが、彼らの持つ妖しげな魅力を解き明かす
のにピッタリな曲ではないかと考えたからです。分かりやすいキャッチーさではなく、
妙に耳に残り、知らない間に虜になっている音の妖術を解き明かすカギになるのではと。

この曲の楽理的な要点を先に言っちゃえば「第3音の出し入れ」ですね。第3音はその調が
メジャーかマイナーかを決める大きな要因になる音ですが、そこが半音上がったり下がったり
を巧みに使い分けている。それにより、明るいような暗いような不思議な雰囲気を作り出す
のに成功しているわけです。

先ずシンセの低音でDの音が流れてきてこの曲は始まります。そこからドラムとギターの
アルペジオが入ってきますが、ギターのアルペジオは5度と9度の音は奏でますが、巧みに
3度の音は避けています。まあパワーコード的な効果を持っているわけですね。そして
コードはD→Gと一→四を2回繰り返した後、あろうことかBm→Eへと進みます。これは
彼らのコード使いにはわりとよく出てきますがまあヘンなコード進行ですよね。Bmは
メジャーのDmajorだと6の和音になりますね。その後のEは、本来ならEmだと二の和音に
なるのですが、それがメジャーになっている。これ、典型的な使い方だと次にAに行って
副五という使い方ですよね。いわゆるセカンダリー・ドミナントでポップスの世界では
非常によく使われる典型コードです。ところがここでは、Aに行かずにDに戻っちゃう
わけですよ。それによって、むしろその前のBmの調、つまり短3度下へ転調している
ような趣が出来る。そうなるとEの和音はドリアの四になります。

実は、ここまでの動きならば、問題のDの和音はメジャーと捉えるのが自然です。Bm→E
と来たら、普通はDmに行かないでしょう。耳は自然な方向に解釈しようとするので、
ここはDの和音と捉えて進みます。実際、歌メロが入ってもその解釈を裏付けるかのように
メロディ・ラインではF#の音を通ります。しかしこの歌メロ、80年代の洋楽の特徴でも
あるのですが、脇役感の強いメロディですよね。その前までの音像が主役で、そこに
添えられているかのようなメロディ。

ところが! そのメジャーの音像を揺るがすかのような音が、コードの変わるところで
入ってきます。それは、これまであえて封じられていたベースの音。フレットレス・
ベースらしき音で「F→E→F→G」と妖しげな音を奏でる(ここでのベースは終始
妖艶ですね)。まあそれはGのコードのところで奏でるので音はぶつかっていない
のですが。それに、ここでFになるということは、そのGのコードが属7という
ことになるので、それはそれでロックンロールに典型的な音使いということになります。
ただ、その音をベースが奏でていることと、そこまでメロディ・ライン(これも目立たぬ
形でメジャーを主張しているに過ぎない)以外はパワーコード的に曖昧性を保っている
ので、少しドキッとするように聞こえるということなのでしょう。

そしてサビ(この曲はA−B構成)。ここも最初にベースレスでコードを先ず奏でる。
メロディも1回目のコード回しのところでは出てこない(次のアウフタクトとして
途中から出てきますが)そのコードはこうなっています。
 |E|D|A|A|
要はDmajor(Dminor?)→Emajorに転調しているわけですね。1音上への転調で、彼らは
割り合いよく用います。ここでのメジャーコードは、きちんと3度の音を使っているので
そう解釈出来るわけです。ところが、ここではメロディ・ラインが先ず裏切るんですよ。
アウフタクトとして入ってくるメロディは、G#でなくGを使うことで、明らかにEminorの
旋法を用いているわけです。それに呼応するかのように、2回目から入ってくるベースも
「A→G→F#→E」とやはりマイナーを意識している。そして注意深く聴いていても、
1回目で意識的になっていたG#の音は消えている(!)わけです。つまりここは、Emajor
でなくEminorに転調していたことになります。

しかもここの音像がタマラなくヘンなのは、コーラスではF#でなくFの音でハモっている
んですね。ただヘンなのはEmのコードのところだけで、その後はDもAも3度のところは
メジャーの音(つまりF#やC#)をベースもコーラスも通っているわけですよ。

その不思議さは2コーラス目で助長されます。というのは2コーラス目でフェイク的に歌われる
メロディでは高音のFが最高音になるわけです。つまり、ここではマイナー。もっともこれは
いわゆるブルーノート的とも言えるわけですが。その証拠に下のところではきっちりF#の
ラインを通っています。まああれこれ想像されてしまうのは、音の手がかりが少ないので、
余計なことを考えさせてしまうからなんですけど。

そして2コーラス目のサビでは1回目の回しからベースラインが入っています。ところが
この1回目では「C#→B→A→G#」と3度はメジャー(G#)の音なんですよ。2回目以降で
マイナーになるということなのでしょうか。

そして、この曲の妖艶さをさらに増しているのが、不思議な間奏。ここでのコードは
こうなっています。
 |Fsus4 add7|AinE|Fsus4 add7|AinE|
 |Fsus4 add7|AinE|G|D|
すごくヘンなコードでしょう。暖色系(#の多い)のコードから寒色系(♭の多い)のコードへ。
しかもサス4から転回形とどちらも曖昧な色合いを持つコードでもある。根音としては
半音下へ行っているのですが、ベースの動き的に長7度上に進行しておるように聞こえる。
ここの部分はしかも、そのコードの奇妙さを味わわせるかのように、余計なソロはなく
ギターのアルペジオと妖艶なベースのフレーズのみに抑えている。

そして3たびAメロからサビへ、そしてサビを何度も繰り返すのですが、最後の20秒くらいに
いきなり最後のAのコードのまま、その属7のフレーズをリフレインして終わる。これも
思わぬ形での着地ですよね。

こうして1曲、楽理解説して分かるのは、Duran Duranって意外と引き算の用法に長けている
ということ。余分な音がないから、1音1音の効果がハンパなく聞こえるのでしょう。

来月は、さらに80sニューウェイブを極めたいと思います。定番曲、Totoの「Africa」に
挑戦します。知らない方は、あらかじめ聴いておいて下さいね。
posted by なんくい at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月28日

ORESAMAの「再デビュー」によせて

エレカシやウルフルズ、そしてCorneliusとベテランばかり取り上げているこのブログ。
たまには若手も取り上げないとね。ということで今日はORESAMAの記事です。

といってもORESAMAを取り上げるのは初めてではなく、以前こういう記事を書いていました。
またもや新星「ORESAMA」って何者?

その後、一年半もごぶさたしてしまったのは、決してこのブログが不精だっただけでなく、
ORESAMA自体も苦境に陥っていたそうなんですよ。以前出たナタリーの記事が分かりやすい。
ORESAMA「『ねえ、神様?』」インタビュー

彼らのようなグループがメジャーから切られてしまうということが、音楽業界の世知辛い
現状を象徴しているように思えてしまいます。(だから、もっと若手を応援しないと、言うても
ベテランは固定客いるからねえ)

私はこの記事を読んで以来、タイミングが合えば彼らを応援する記事を書きたいと
思ってきました。そして、ついに時は来り。再びメジャー・デビューを勝ち得ることが
出来ました。パチパチ!!!

公開されているそのMVを見ておきましょうね。



おおおお! いいじゃないですか。彼ららしさを残しつつも新機軸でドキドキさせてくれる。
売れそうなオーラも相変わらず。てゆーか、これ売れなきゃダメでしょう!

そしてカップリングには彼らの再起への転機となった曲も収録されるという。



ORESAMAで活動できない時期に、ボーカルのぽんさんはnanaという投稿サイトで歌ってみた
音源を投稿していたそうで。その頃の気持ちを言葉にしたヘビーな歌詞が、きっちり
ORESAMAの楽曲として昇華されている。これを聴いて私は、彼らは大丈夫だと(音楽に
ついては)安心したことを覚えています。

小島さんはORESAMAが止まっていた間も作家として活動できていましたそうで、ソング
ライティングの才は保証済み。おまけにぽんさんはアイドル的なルックスもあり、
売れる要素しかないと思うんですけどねえ。このブログに来るアイドルが好きな方も
どストライクじゃないでしょうか。

といっても、どうやら彼らには若いファンが結構ついているみたいで、要はそのファンが
どれだけ彼らを支援できるか、というのもこれからの彼らの運命には大きいでしょうね。
もしまた、メジャーから切られることがあっても、全然インディーズでやっていいと
思うしね。やれるだけのファンもついているし。私も、微力ながらこれからの彼らを
応援したいと思います。
ラベル:ORESAMA
posted by なんくい at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする