2015年09月07日

ORIGINAL LOVE「ラヴァーマン」より「フランケンシュタイン」楽理解説

ORIGINAL LOVEファンの皆様。お待たせいたしました。1ヶ月ぶりの「ラヴァーマン」
楽理解説でございます。本当はもう少し早くに進めたかったのですが、色々ありまして。
ただ今回、かなりの難物で、内容もボリューミーでございます。

「ラヴァーマン」関連で言うと、実はここのところある曲についてアツいのをご存じでしょうか。
この楽理解説では扱わない予定ですが、2曲目の「ビッグサンキュー」をめぐって侃々諤々が
起きているのです。
「ビッグサンキュー」の謎(?)|バベルの塔または火星での生活

オリジナル・ラブ「ビッグサンキュー」〜謎に挑んで四半世紀を振り返る最終回|Yondaful Days!

この「ビッグサンキュー」が2曲目に位置していることへの違和感から出発した
歌詞の深読み合戦ですね。こういう試み、楽しいです。色んな説が飛び交っていますので、
「私はこれを支持する」という意見が色々出てきそうです。(あるいは新たな説も?)

ただ、こういう歌詞の深読みに慣れていない方のために一言申し上げると、これはあくまで
もっともらしさを競う「知的ゲーム」のようなもので、ここで正解が一つに決まる、という
ものでもないんですよ。実は作者はこういう意図を持っている、なんてケースもあるのですが、
それすらも「一つの正解」とは限らない、なんて場合もあるくらいです。

ですから、ゲームとして行うのなら別ですが(ビーフもある種の知的ゲームですから!)
自分とは合わない解釈を排斥するというのもちょっと違うわけですよ。何より多様な解釈の
余地がある、ということ自体、その曲の豊かさを表していると思いませんか。

知的ゲームということで言えば、今からお送りする楽理解説も解釈の一つに過ぎません。
音楽理論は奥深いので、色んな解釈があり得ます。(特に今回の場合、別の解釈もあり得ます。
その話は、記事の中で詳しくお話しますが)もっとも、とっつき易さの面からか、その認知度は
1000:1くらいでしょうけどね。それを何とか100:1くらいに出来ればなあとは思って
いますけども。ご托はくれくらいにして、そろそろ始めます。

「ラヴァーマン」の5曲目に位置する「フランケンシュタイン」は、とにかくリズム!
冒頭からリズムの複雑さで魅了してくれます。いきなり手拍子から始まりますが、
これが何拍目か分からないまま、複雑なリズムの洪水が始まります。

そこは、ベースとバッキングの刻むリズムが、付点四分音符単位、そしてギターの
単音リフは付点八分音符を強調したリズムを刻んでいます。具体的にはこういう感じ。
frankenshutain01.jpg

frankenshutain01.mid

このように、ギターリフは基本付点八分音符単位で動いているのですが、所々リズムが
リセットされているため、ちょっとずれているんです。その証拠に、バッキングを加えると
こうなっています。
frankenshutain02.jpg

youoweme02.mid

バッキングは2拍目から付点四分音符単位できっちり4つ刻んでいますので、
ギターリフがそれとずれたり合ったりしているのが、お分かり頂けると思います。
そして手拍子はこれの4拍目にそれぞれ打っている形になります。

ただ、この譜面を見て、ちょっと音楽的ココロのある人なら「あれ?」と思うはずです。
この譜面、間違っているんじゃないの?と。ここからがちょっと深い話になるのです。

というのも、実際はこれよりそれぞれ1拍早く聞こえるからです。つまり1拍裏から
始まるギターのリフは、アウフタクト(前の小節の4拍裏)で始まっているように
聞こえる。そしてバッキングは2拍目ではなく1拍目かた始まるように聞こえる。

当初は私もそのように考えていました。(となると、手拍子は3拍目ですね)それで
進めると、サビでつじつまが合わなくなってくるのです。このリズム、Aメロから
Bメロと、裏打ちのハイハットを中心とするドラムが入りながら、進んでいきます。
ところが、バッキングを1拍目始まりでカウントしていくと、サビ入りが1拍短い
ように聞こえる
んですよ。「フランケンシュタイン!」という叫びがアウフタクトで
次のようなバッキングが聞こえてきます。
frankenshutain03.jpg

frankenshutain03.mid

こちらは2拍頭から始まるのが自然に感じるわけです。そこで、聴いている側としては一つの
リズムトリック(しかしかなり長いダマシ)で虚を突かれることになります。「あれ、ここだけ
4分の3だったの?」と。さらに、そこから2コーラス目に入ると、今度は1拍余るように
聞こえるんですよ。あくまで、バッキングを1拍目始まりと考えると、です。ところが
2コーラス目ではバックも整っていて、上に書いたようなリズムが正しいということが
証されるようになっています。これが何を意味するかと言うと、1コーラス目と2コーラス目とで
は、メロディがずれているように感じる
、というわけです。ですが当然それは錯覚(錯聴と
呼びたいですね)でして、1コーラス目が上の譜面のように1拍早く始まっていることが招いた
トリックなのです。

はあ。ここまででついて来られていますか? でも一番難しい箇所を説明し終わったので、
後はさくさくっと進めますね。ここまでのまとめとしては、複雑に絡み合うリズムと、
1コーラスから2コーラスにかかった大がかりなリズムトリックについて説明しました。

そしてここのメロディですが、全般的に少しエスニックに聞こえるんじゃないでしょうか。
それは、この曲の持つ独特な旋法から来るのです。この曲はGmajorのキーなのですが、
Fの音がナチュラル(本来あるシャープがついていない)ので、いわゆる「ミクソリディアン」
という旋法に聞こえます。「ソラシドレミファソ」ですね。ところがそこに、
第3音(Bの音)が♭になったり普通のBになったりと動くのです。メロディ頭で早速
両方の音が出てきますね。これ、Bが♭だとドリアン旋法(「レミファソラシドレ」)
になるのです。その多義性が、エスニックっぽく聞こえるんでしょうね。

それがBメロになると「G〜A♭〜B♭〜C〜D♭〜E♭〜F♭」という奇妙な旋法を
描くことになります。これ、G〜E♭までならロクリアン(「シドレミファソラシ」)
なんですが、最後の「ラ」も半音下! 途中で「D♭=ラ」の旋法に切り替わっている
(しかも旋律短音階か何かで「ファ・ソ」が半音上がっているような)という、
ここでも旋法のずれが見られるのです。旋法のずれというのは、音楽文化論的には
文化の衝突を意味するのでしょうが、そういう話には深入りしません。ともかくここでは
架空の民族音楽のように聞こえる、ということを押さえておきましょう。

そしてサビ。サビは先ほど上で示したようなバッキングがストリングスを中心に奏でられて
います。これも、不思議な旋法ですよね。前半はディミニッシュを表す旋法でして、これは
比較的よく見られるんですね。短音階の第5音(「ミ」)が半音下がってディミニッシュを
表すという。訳が分からないのは後半。これはE♭を主音にしたインド音階と捉えることが
出来ます。インド音階(バイラヴ・タート)はE♭〜F〜G♭〜A〜B♭〜C♭〜D〜E♭
と並びますから。それを、ロクリアン的にDから始めたと考えることが出来ます。
いずれにせよ、ヘンな音の並びですよね。

この曲のポイントとしては以上の二つでしょうね。それと比べるとコードはそれに合わせた
形となっているので(ところどころ、ジャズ的なテンションをはめていますが)瑣末なところ
でしょう。GのキーからのA♭、つまりナポリの二を巧みに用いていると思いますが、それも
エスニックなスパイスとしています。サビのA♭→F♯→Gmというつなぎにはシビレました
けどね。(ということで、今回コードは拾わないことにします。あまりに煩雑になるので)

次回は「クレイジアバウチュ」です。その前に、別のアーチストのリクエストされている曲が
あって、それを連休中に仕上げます。「クレイジアバウチュ」はそちらと対照しても面白い
かなあと考えています。
posted by なんくい at 17:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>「知的ゲーム」のようなもの
「ビッグサンキュー」をお題にしたプロレスとして楽しませてもらいました。違和感を残すという意味では作者の思惑通りなのかな。「異化」という手法はオリジナルラブの魅力のひとつだと思います。


なんくいさん、素晴らしすぎます。大好きな曲を構造から学び、さらには音源と同じ音を弾けるなんて最高の贅沢です。コードを書き起こして歌本みたいにしています。
「フランケンシュタイン」のつくりを知ることは念願でした。楽しい解説をありがとうございます。

「フランケンシュタイン」は古いブラックミュージック(というかCurtisのSuperfly)と今のブラックミュージック(というかDのBlack Messiah)を融合させて面白いものを1曲作ってやろうという音楽的な野心のようなものが感じられて大好きな曲です。艶っぽくていいですよね。
「今夜はおやすみ」の楽理解説と併せて大変勉強になりました。恩恵に与ってばかりなのもどうかと思いますが「クレイジアバウチュ」の楽理解説もめちゃくちゃ楽しみにしています。
Posted by SWEET SWEET at 2015年09月08日 21:47
>SWEET SWEET さん

コメント有難うございます。おほめ頂き、大変励みになります。

記事では触れませんでしたが、SWEET SWEETさんが仰るようにブラック・ミュージック(基本R&B)のフレイバーが色濃いナンバーですよね。プラス、エスノ風味の調理の仕方でThe Beetles入っている印象もあります。(その辺の雑多煮感覚がイマっぽい、それこそD'angeloなどに通じるテイストかも)

「クレイジアバウチュ」の前に別アーチストでリクエストされた曲があり、そちらを先に仕上げる予定でいます。ですので、今しばらくお待ち下さい。
Posted by なんくい at 2015年09月08日 23:24
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