2016年09月05日

Spitz草野マサムネのメロディ10の秘密#1 跳躍するメロディ

今月から短期集中連載として、スピッツのメロディの解説をします。といっても
メロディの解説は、著作権にもろ引っかかるので、あまり具体的に言及するのは
不可能です。ですので、その曲を聴いて知ってもらえれば分かるような書き方に
なってしまうことをご了承ください。スピッツの曲はさすがに皆さん知っておいで
(といってもシングルでない曲にも言及しますが)でしょうが、この機会に是非
知らない曲は聴いてみて、参考にして頂ければと思います。では、始めます。

スピッツのメロディがヤバいと気付いたのはいつだったか、私の記憶では「裸のままで」
が最初だったと思っている。この曲のサビはAから順に1音ずつ上がっていく進行に
なっているのだが、「ゆっくり」の「く」から「り」にかけて、7度下がっているのだ。
AからB♭へというと普通2度上への進行が普通なのだが、しかもずっと1音ずつ上がって
きているのだが、ここで1オクターブ下へ「もぐる」。その後すぐに7度上のAに戻って
さらに上のB♭へも行くのだが、ここでの「7度下への潜り」が音楽的深みを作り出している。
ここが「上手いなあ」と思うわけです。



今回はこの「跳躍」をテーマに論ずるわけだが、メロディを跳躍させるというのはなかなか
おいしいポイントで、作曲をやる人はメロディをどこでどのように跳躍させるかに心を配る
わけです。そこで、メロディの達人草野マサムネ氏のメロディでの跳躍をこれから見ていく
のだが、跳躍といっても「上がる」だけでなく「下がる」ところにも注目してほしい。
メロディは上がるだけでなく下がることでバランスを取るわけだが、草野マサムネ氏は
下がり目にも気を配っているのだ。

それが現れているのが、初期の名曲「魔女旅に出る」だ。(これは貼れない。各自聴いて
おいてくれ)この曲の最後の部分「いつでもここにいるからね」の「いるからね」のところ。
「いる」でA→B♭と上がっておいて「から」でオクターブ下で今度はB♭→Aと下がる。
ここで「る」から「か」へ1オクターブ下へ下がっているのだが、そこからさらに1音
下がるなんて有り得ない! 普通そこから上がったりするだろう、と思うのだが、ここが
非常にフックになっている。まあバックのCのコードに対してAもB♭も特殊な当たり方を
している(B♭は7度、Aは13度)のだが、その2音が非常に強調される。さらに最後の
Fともヘンな関係(ちなみにA→Fへは6度上へ跳躍している)を保つ。流麗なメロディ
の中で、ここが非常にフックとなって残るんですね。

だんだんシングルでない曲を使っていきます。続いては『空の飛び方』のラストを飾る
「サンシャイン」。この曲もサビが印象的ですが、サビでいきなり7度跳躍の2連発!
ここが非常にフックになっていますね。B→Aのあと、C#→Bと行くのが非常に気持ちいい。
ここ、2つともそのバックのコードに対して同じ当たり方をしているんですよ。
最初のB→Aは、バックのコードがGだから3度→9度。次のC#→Bも、バックのコードが
Aだから3度→9度。つまり、メロディの作りがバックのコードをナインスに響かせる
わけですね。それが気持ちよさの源泉になっている。

続いては「ハチミツ」。アルバムのリード・トラックで、変拍子的なAメロが非常に印象的
ですが、ここのメロディの上がり下がりもかなりヤバい。最初のF#→E→Aまでは普通ですが
そこからGへ7度跳躍。そこからF#を経てGへ7度下がる。(「魔女旅に出る」みたいですね)
そこからEへ6度跳躍してDへ落ち着く。(最後さらにF#へ6度下がっていますが、ここは
普通に響く。バックのコードと合うからかなあ)ここですね。上の音だけを拾うとF#→Eから
2度上のG→F#→E→Dとほぼ順次下降していてふつうなんです。さらに下の音だけ拾うと
A→G→F#とこちらも順次下降。それを声部を交互に行き来させて複雑な響きを作り出している
んですよ。非常に、勉強になります。

最後は「渚」これはシングルなので音を貼れます。


この曲はサビまでは非常に平坦なメロディで少しずつ高揚させていき、サビで取っておいた
跳躍を繰り出して聴き手を「浮かせる」ことに成功していると思います。先ず「柔らかい日々が」
のところでG→A→BからGへ6度跳躍。これは和音的に特殊な当たり方はしていないのでまだ
ジャブを繰り出したくらいなのですが、最後の「冷めないで」のところはC→Bへの7度跳躍。
しかもバックのAmに対して3度→9度というナインスを意識させる作りになっていて、非常に
効果的です。ただ、そのおいしい部分を最後まで取っておいて、徐々に盛り上がていく展開力
あってのことですが。(「渚」についてはまだ言いたいことがあるので、それはいずれ)

今回は第1回なので、メロディの目立つフックの部分を特集しました。跳躍ってメロディのおいしい
部分なのですが、草野マサムネ氏のメロディはちょっと普通じゃない響かせ方をしているのが
お分かりいただけたかと思います。次回はそれと逆に、メロディが同じ音を奏でるという
ワン・ノートと、順次進行について特集いたします。
posted by なんくい at 11:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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