2017年06月19日

スピッツの新曲「ヘビーメロウ」が絶妙なJポップ批評になっている

ご無沙汰しております。ちょっとパソコンの調子が悪くて、先週は更新できません
でした。今週は頑張って更新したいと思います。パソコンの調子次第ですが。

今日はスピッツについて書きます。新曲「ヘビーメロウ」聴きましたか?


タイトルはおそらく「ヘビーメタル」を意識しているのでしょうね。英語読みだと
「めたる」は「メロウ」と聞こえますし。音的にも、間奏のギターなんか少し感じます。
(それがウーリッッァー(エレピの一種)中心のサウンドに合わせるのが面白いですが)

ただこの曲、かなり面白い構造を持っている、というのが今回の記事の趣旨。軽く解説
しちゃいます。(楽理解説というほど重いものではないですが)結論としては、タイトル
に書いた通り、絶妙のJポップ批評になり得ている、というものです。

先に、昨今のJポップの構造について復習しておきましょうね。いわゆるメガ盛りのような
盛りだくさんな要素が入っているのが、ジャンルに関わらぬJポップの特徴と言えましょう。
Aメロ〜Bメロ〜サビを2回しして、そこにブリッジというDメロが入り、間奏から1回
落ちサビ(だいたいサビがゆっくりになったもの)があって、サビをリフレインして終わる。
さらにバラードなんかの場合は、最後のサビで一行返しなんかを繰り返してお腹いっぱいに
なる。こういう、情報量が多くなることで、5分を超えるボリュームになるか、あるいは
BPMを思いっきり早くして4分くらいに収めるというのが常道のようです。

ですが、このスピッツの「ヘビーメロウ」は3分半というミニ・サイズ。しかもBPMが
110近辺というゆったりしたテンポ。16ビートの溜めをしっかり聞かせる、すき間のある
つくりになっているんです。これだけでも、Jポップの対極を行っている。

しかもこれ、Aメロ〜Bメロ構造なんですね。いわゆるA〜B〜C構造でなく、洋楽の
ヴァース〜コーラスのような構成。それも、Bメロの方がサビというより、ややAメロが
メインのようにも聞こえる。というのもイントロのコード構成がAメロの前半と同じ
であったり、間奏のギターソロもAメロと同じコード進行で、要はAメロの要素が楽曲の
過半数を占めるわけです。

それでいて、問題のBメロは、聴いて頂いたら分かる通り、サビとしての強度を持ち合わせて
おり、いわゆるJポップ的なサビとして機能するように作られているんですよ。つまり、
洋楽的なつくりをしていながら、Jポップ的に聞こえる、という荒業に成功している。

それを見ていくために、楽曲の構造を一応見ておきましょうね。先ず、イントロが8小節。
これは、
  |G|Am|Bm|C|
という一→二→三→四というコード進行を2回繰り返すだけになっています。しかもここ、
ほぼコード・ストロークだけで(ギターのコードストロークがリフっぽいですが)非常に
ミニマルなつくりになっています。

そしてAメロが16小節。これは、次の
  |G|Am|Bm|C|Em|Bm|C|F・D|
というコードを2回ししているつくりになります。まあここは普通の構造ですね。

次にBメロですが、ここは2つの部分に分かれます。先ずは前半が
  |C|C|Bm|Em|
という4小節を2回し。ここがサビ的に聞こえる印象的なパートですね。それに続いて
  |Am|Am|D|D|
という4小節がくっついている。つまり、サビが12小節という変則的なつくりになっている
わけなんです。後半の4小節は、サビで盛り上がった後の締めのような、つなぎのような
機能を果たしている部分ですが、普通のサビではここで解決して終わるのですが、ここは
解決の一歩手前、つまり二→五で終わっていて、Aメロ最初の一の和音にすんなりつながる
ように出来ています。

なので、Aメロ〜Bメロの2回しは、間に間奏とか入れずにすんなり入っているわけです。
ここまで、イントロ8小節〜Aメロ16小節〜Bメロ12小節〜Aメロ16小節〜Bメロ12小節で
合計64小節。(いや、イントロのドラムブレイクを入れたら65小節だな)そしてここから
後半戦に入るわけです。

後半はギターソロの間奏から。ここはAメロと同じコード進行の8小節を1回し。ここも
短めですよね。そして続いてなんと落ちサビがあるんですよ。しかもここ、Aメロなんです。

実はBメロを落ちサビにするという手はありますが、Aメロを落ちサビというのは、間奏前に
Aメロでゆっくりした部分を作るという手か、AメロからBメロをすっ飛ばしてサビに行く
というパターンくらいです。いずれも少数派ですが、ここではその少数派の手法が採られている。
しかも、Aメロ〜Bメロという単純な構成なので、非常に自然につながっているように聞こえる
(つくりとしてはBメロを落ちサビに用いる手法に似て聞こえる)わけです。この落ちサビ、
昨今はお客さんがケチャをするパートとしてJポップに欠かせない要素になってきている
わけですが、それをきちんと入れてくる。しかもそこからサビに突入する手法も今っぽい。
ここのパート、コードを取ってみるとこうなります。
  |G|Am|Bm|C|Em|Bm|C|F|D|(2/4)|
いわゆる9小節と2拍という超変則的なつくりですね。具体的にはAメロの8小節目の
コードが変わる部分を引き延ばして、さらにドラムブレイクを2拍加えている。これって
サビへのジャンプ台という形で、Jポップでよく用いられる手法ですよね。しかも、ギター
ソロと合わせても普通のAメロ1回分というあっさりした中にこういう手法を入れているので
インパクトがあるんですね。

そしてまた絶妙なのが、最後のサビ。ここでリフレインするのがJポップの常道で、この曲も
繰り返しているのですが、それがまた変則的なんです。Bメロ前半の4小節を、ここまでは
2回ししていたのが3回し。つまり1.5倍の長さという変則形なんですね。でもそうする
ことで、後半の4小節と合わせて16小節で収まりはかえって良くなる。そういう面白い
増やし方をしているんですよ。そして後半の4小節は繰り返さずに、そのままアウトロも
なく終わる。この終わり方も、昨今のJポップのスパッと終わる手法(この辺はまあ洋楽起源
ですね、割とフュージョン系の曲から入ってきた印象)を踏襲していますが、繰り返さずに
あっさり終わるのと、最後が五のコードで解決する手前で終わってしまうことで、非常に余韻が
残るつくりになっているわけです。

後半のつくりをまとめると、ギターソロ8小節〜落ちサビ9.5小節〜サビ16小節で合計
33.5小節(でも最後が伸びて終わるので、35小節くらいと考えて良い)非常に短いことが
お分かりかと思います。

この「ヘビーメロウ」は、非常にあっさりしたミニマルなつくりながら、Jポップの要素を
巧みに入れてきている。Jポップとは異なる構成をしながらJポップを偽装するのに成功
している。というのがお分かりかと思います。それをミニマルなスタイルで成し得ているのが
見事なJポップ批評だと思うんですね。

それと、Jポップのお腹いっぱい感と対極をなす、繰り返し聴きたくなるようなあっさり感。
今のJポップって盛り込み過ぎでしょう、とさりげなく言っているような、見事なJポップ
批評だと思いますね。

この曲が「めざましテレビ」などの露出で若い人にたくさん聴かれることの効果は意外と大きい
のではないかと期待する部分もあります。そして、これを読んでいるクリエイターの方は、
是非とも手本にして頂きたいなあと念願します。
タグ:スピッツ
posted by なんくい at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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