2017年06月20日

正しさだけじゃ何も動かない!

今日は著作権についての記事を書きます。最近は音楽教室の問題で何度か書きましたが、
その後で、反動的というかJASRAC擁護側のサイトの存在を知りました。
それに反論したい、というのがこの記事の趣旨なのですが、少々気持ちが重いです。

というのも、その反論の趣旨が、タイトルに書いた「正しさ」への疑義なのですが、
これは下手するとブーメラン的に時分に跳ね返ってくる事態になりかねない。自分だって
「正しさ」を盾に相手を批判することありますから。それに、ここで言いたいのはただ
対立だけしていてもイカンだろう、という趣旨のことなので、この人と対立したいわけ
ではない
んですよ。ましてや、批判をして留飲を上げたいわけではない。

でも、音楽を愛し音楽の未来を憂える気持ちは共有してくれるだろうと信じて、こちらの意を
汲んでほしいという願いを込めて、出来る限り分かりやすく書くつもりです。でも容赦は
しないので、非常に厳しい批判を書くことになります。おそらく、この方にとってはこれまで
食らったことのない批判でしょうね。私のようなスタンスの人は希少ですから。

ぐだぐだ言っていないで、件のサイトを紹介しましょう。mixiのページだそうです。
JASRACは僕らの町役場

いかがですか。非常に戦闘的なサイトですよね。「インターネット上での日本音楽著作権協会
=JASRACにまつわる逸話は99%が嘘」って、書いてるコチラもドキッとしますね。

でも、この99%ってきちんと統計取ったのか? そうでなければこの言説自体も「嘘」じゃ
ねえの? と、こういう断定的な物言いにカチンと来る性質の私は、そういう屁理屈を言いたく
なります。でもまあ、そういう細部に目くじらを立てるよりも、このサイトの主張に耳を傾ける
べきでしょう。

このサイトを書いている方は学校関係の方(先生?)だそうで、教え子を犯罪者にしないために
著作権に関する正しい情報を集めることから、こういう発信を始められたようです。

私自身も法治国家を尊重するという立場から、現状の著作権法は守るべきだと考えます。
ただ、それと(現状の)著作権法を無批判に受容するというのとは異なる、とも考えます。

というより、著作権法自体、ちょくちょく変更されているわけで、正しいといってもあくまで
その時点での話になっちゃうと思うんですよね。その辺はどうお考えなのかな、と感じます。

また、その著作権法の変更自体、著作権者の言い分ばかりが通るのが問題なのではと考え、
論陣を張っている、というのがこのブログでの立場です。実は、似たような立場で発信して
いらっしゃるプロの方に福井健策さんなどがいらっしゃいます。
骨董通り法律事務所

件のサイトの書きっぷりは非常に戦闘的で、逆ギレといっても差し支えないほど、JASRAC批判
に対して容赦なく反論しています。トップページの記事からして「デマ、嘘を拡散するのも
犯罪です」ですからねえ。さすがに言い過ぎだろうと思いますけど。(正義感が強い故こういう
強い調子で書かれているのでしょうけどね)

例えばこの記事なんか強烈です。
CDが1枚売れたときに

実際に、このテの誤解って多い気がします。おそらく著作権料の分配ということで言えば、
JASRACが取っている手数料は大したことないだろうなあと推察されます。(ただ包括して
取っているので、合計的には膨大な金額になるでしょうが)

ただ、ここではそういった分配の実際に話が行くのでなく(実際問題、もっともお金をもらう
のがレコード会社や流通と明記してあります)レコード会社などがたくさん取ることの理由、
つまり正当性を書いているわけなんですよね。でもそれ、正しさ云々からズレてません?

ここでの議論が苦しくなるのは、実際の数字の話が出来ないから。私もいくつかは聞いたことが
ありますが、伝聞ですし昔の話だったりするので、正確に今どのくらいの分配率なのかは判然と
しません。(契約によっても異なる部分もあるでしょう)そのことに対する、業界側の言い分を
この人は書いているに過ぎないんですよ。(それはそれで、意味があるとは思いますが)

この辺については、どのくらい暴利をむさぼっていて、どのくらいが正当な取り分なのかは、
実際の契約を見てみないと何とも言えないわけですよ。私の見立てだと、どんぶり勘定的な
昔の商習慣が現在の音楽業界では残っていて、ただそれも時代に合わなくなってきているのでは
ないかなあ、というところなんですが。

その辺の細かな契約事項は、当事者以外は関係ないことですが(ただ、昨今の芸能界のブラック
な契約事項が色々ニュースになるのは、全体的にはいい傾向だと思います。エンタメ業界全体で
やっぱり色々変えていかないといけない時期なんでしょうね)いくら正しく著作権者に分配
されていると強弁しても、ある程度の透明性は確保されないと説得力は持ちえない。それは、
このブログでも散々発言している通りです。(それに、その透明性が思わぬ副産物を生むという
提言も、他方で行っています。最近、私は「JASRACとオリコンが合併」という試案を持って
いるんですよ。検討してくれないかなあ)

要はこの人、トップページに「JASRAC信託者(中略)音楽事業者からの正しい情報のみを掲載して
まいります」と書いてますが、その結果、権利を持っている人の御用聞きになってしまっている
んですよ。

当然、そういう関係者は著作権法を熟知していますから、法的には正しい情報を得られる
でしょう。ただ、この人が依拠している「正しさ」って、所詮その程度のものなんですよ。
著作権への批判があったとしても、それに対しては権利者の側からしかモノが言えない。

著作権の未来を考えるためには、当然それだけではダメで(その理由は後で書きます)著作権法
の成り立ち、そしてもっと音楽の始原から未来への展望を基にする必要がある、というのがこの
ブログの立場です。だから、テクノロジーの進化なども考察の対象になるわけです。

話をより本質論に進めます。このサイトの主は「ネットでのJASRACをめぐる言説は99%ウソ」
と断じて、正しさを盾にウソ情報を斬りまくっています。その「正しさ」の浅薄さを先ほどは
批判したのですが、それ自体はいいんですよ。本質的な問題は、そんなことをして何になるんだ
ということ
なのです。

もちろん、正しい情報は必要だし、教え子を犯罪者にしないという志は立派です。ただ、
こういう高圧的な調子でJASRAC批判に対抗しても、相手が「分かりました私が悪かったです」
と反省するとでも思っているのかね?(だとしたら相当おめでたいよ)

何故そういうことを言うのか、については私のこの記事をご覧いただきたいです。
録音技術が変えたもの#15CCCDがもたらしたもの

要は今のJASRACをめぐる言説の不幸は、相互不信になってしまっていること、なんですよ。
JASRACは分かりやすく悪玉になっていますが、応援したいミュージシャンの裏に業界の
エライさんがいる、というのは詳しくない人でもうすうす感じ始めている。

そんな状況下で「正しい情報」と称して、業界側の御用聞きみたいな意見を高圧的に展開
したって、対立をあおるだけですよ。それともこの人は、本当は音楽なんて愛していなくて、
それよりも自分の「正しさ」に酔いたいだけ
なのではないか、とすら思ってしまいます。

私は、JASRACや音楽出版社側の人が取るべきアプローチは、その対立を解消する方向での
アプローチ
だと考えます。例えば音楽出版社なら、ミュージシャンの敵ではなく同士なんだ
という方向での発信を、上手に行っていくことでしょう。(実際にそうなのですから、決して
難しいことじゃないはず。一番は、業界のエライ人が自ら発信することだと思いますね)

結局、音楽の未来のために、今こそ立場の違いを超えて、風通しの良い議論を行っていく
べき時期
なんですよ。そのために、批判はたくさんあって然るべきだし、その批判に対して
誤解なら解いていくことは有効です。要は、より開かれた議論のために情報を発信する、と
言うのなら、この方向でも全然OK
なんですよ。現状の著作権法ではこうなんですよ。そして
著作権者の立場からはこう考えるんですよ。それを、やさしくかみ砕くサイトには、断然
意味があります。(そして、学校関係者らしく、説明の手際は上手です)

ただ、前の記事にも書きましたが、JASRACを批判する側の人は、現状の著作権法に依拠して
批判しているわけでない。むしろ著作権法に批判的なんだ、ということは頭に入れておくべき

でしょう。その上で、より良い著作編法にしていくために、議論をしていくべきなのです。
著作権法を変えていくのに、現状は一部の権利者の声ばかり反映される仕組みですから。
(もっとも、それ以上に声を上げない我々ユーザーの問題も大きいのですが)

どうか、このサイトの方(や、JASRAC擁護の論陣を張る方)は、より広い視野と寛容な心で発信
を続けて頂きたいです。音楽の未来が先細りしていくことが、私の最も憂えることですから。

私の今の気持ちを一番よく表している曲を最後に貼ります。(クリエイティブ・コモンズ音源
です悪しからず)音楽を愛しているのなら、この気持ちを分かってくれるよね!
雪のために花が散るなら
posted by なんくい at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック