2014年08月29日

『AKB48「4分33秒」』をネタにした妄想

ゴールデンボンバー「ローラの傷だらけ」についてはこのブログでも
以前取り上げました。そして今週、リリース週の結果が出ました。

ローラ発売一週間

4.3万枚は健闘したと言えるのではないでしょうか。と同時にスタッフさんの
読みの確かさ(3万枚という予想。まあ話題になった分のかさ上げがあるので)
も窺えますね。

ところが、この結果に対して私の近辺でもいろいろ動きがありまして。
先ず柴那典さんがこの結果についての分析記事をリアルサウンドに書きました。
金爆が“特典ゼロ”シングルでやろうとした本当の狙いとは? 歌謡ロック的サウンドから読み解く

リアルサウンドには別の分析記事もあります。こちらも必読!
特典ゼロ、10円着うた、パロディ動画……金爆の巧みなプロモーション戦略とは?

そして、柴さんがツイッターで、キリショーさんが無音の特典付きCDを売ろうと
考えていたという話についてツイートされていたんです。

ちょうど前日に、私のネット上のお知り合いである(Especiaつながり)くまたろうさん
が「AKB48が4分33秒をカバーすると面白い」というツイートをされていて、一しきり
盛り上がった後だったので、柴さんにそのツイートを紹介したら反応して下さり、
という流れが出来ておるわけです。

この件についてくまたろうさんのブログの記事です。
AKB48「4分33秒」

じゃあ私はどう思うのか?と言えば、以前書いた記事でこの件について言うべき
ことは言いましたし、今回紹介した記事はすべてそれぞれに素晴らしく、激しく
同意します。付け足すべきことはありません。

今回は、くまたろうさんの「4分33秒をAKB48がカバーする」という素晴らしい
アイデアに乗っかり、それに関する妄想をただ垂れ流します。

これから書くことはすべて妄想でして、実在の人物や団体が登場しますがすべて
架空のものと考えていただく方が望ましいです。ちょうど虚構新聞みたいなもの
だと捉えていただければ。唯一ちがうのが、そもそものアイデアがパクリだと
いうこと。(でも妄想が爆発しちゃったので、しょうがない!)

間違ってもここから得るべき教訓などはございません。ただ楽しんで頂ければ。
では始めます。
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AKB48のニューシングル「4分33秒」は、ワンコインシングルとして発売された。
税込みで500円。1曲入り、いや厳密にはシングルとそのoff vocalバージョンが
入ったものとなった。これは総選挙の投票券を封入したシングルとなったため、
200万枚を超える大ヒットとなった。

発売前にPVも公開された。まゆゆがピアノのふたを閉じるシーンから始まる
メンバーの様子をドキュメンタリー風に撮影したPVは、そのあまりにカオスな
内容が物議をかもし、発表から1週間で公開が中止される事態となった。

また、AKBにとってラジオで放送禁止となる初のシングルともなった。理由は
「放送法に抵触するから」。それでも秋元Pは「むしろハクがついていいでしょ」
と意に介さない様子であった。ラジオで放送禁止となっても、ランキング番組では
ファンのリクエストが殺到し、「1位を獲ってもかけられないんですよねー」と
DJが困り果てる事態となった。

この「4分33秒」はライブでも披露された。無音のバックトラックにメンバーも
誰一人声を発しないのだが、客がコールし続けてメンバーがそれにピースサイン
などで応える、という異様な空間が繰り広げられた。

ちなみにこのシングル、iTunes Storeでも発売され、それなりの売り上げを記録
した。無音のシングルなど買って何の意味があるのかと思われたが、それには
「『4分33秒』のトラックのある帯域を何度もブーストすると、ノイズの音に
混じってメンバーの声が聞こえる」という都市伝説が広がったことも要因として
あったと思われる。off vocalバージョンも、そのノイズを除去するために必要で
あるとされた。だが「実際に」メンバーの声が聞けるのかは不明であった。

配信ということで言えば、ototoyがハイレゾ音源でリリースしたが、さすがに
これは売れなかった。「メンバーが近くに感じる」と言ったりするファンは、
どうやらいなかった模様である。
posted by なんくい at 19:36| Comment(0) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月12日

アルゴリズムが音楽を支配する?

今日は、たまむずびで小田嶋隆さんが紹介されていた本に触発された
妄想記事を書きます。

「アルゴリズムが世界を支配する」という本です。
アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書) -
アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書) -

アルゴリズムという言葉は聞いたことがあるかと思いますが、意味を説明する
のが難しい言葉です。一応は問題を解くための手順というくらいの意味なのですが、
今日的にはコンピューターのプログラムを作るための設定、のように考えてもらえると
良いかと思います。(詳しい専門的な話をするわけではないので)

そうしたアルゴリズムが世界を支配するってどういうことだ?とお思いかも知れません。
あるいは、コンピューターが世界を支配する時代がもうそこまで来ているのか、と
戦慄を覚えられる方もいるかも。その詳しい内容は是非本を読んで頂きたいのですが、
ここでは、音楽の世界でアルゴリズムが支配する世界が生じたらどうなるのか、
という妄想を書こうと思います。問題提起的な話になっちゃいそうですが、果たして?
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2014年、コンピューターが作曲をするという「ボカロネット」というサービスが
開始した。これは、詞を入力してジャンルなどを設定すると、その通りに曲を作る
というもので、要は人間の求めに応じて作曲をするだけである。

それに対して、20XX年にコンピューターが勝手に作曲をするサービスが開始された。
サービスというよりも、コンピューターが無名のボカロPを名乗って曲を発表する
というもの。最初は稚拙であったが、発表を重ねるごとに、そのクオリティーは
どんどん上がっていった。というのも、この自動作曲装置は、リスナーの反応を
フィードバックして、自らの曲作り(その装置は作詞も編曲も自分で行う)の
欠点を修正したり、リスナーのニーズを調査しそれに合わせた曲作りを行うことが
出来たからである。

しかし、自動作曲装置のクオリティーはある時点からさほど上がらなくなった。学習
機能の問題ではない。リスナーの好みは多様であり、そのどこに焦点を合わせるのか
という問題が生じたことと、ニーズを探るといっても意見を表明するリスナーはごく
一部であり、サイレント・マジョリティーの意見を吸い上げることが困難であるから
自動作曲装置は、人間のマジョリティーが好む音楽を作り出せなくなっていたのだ。

この行き詰まりをブレイクスルーしたのは、思わぬ方法を考えついた自動作曲装置
であった。その装置はニコニコ動画のコメントを自ら捏造し、多くのリスナーに支持
されているかのように擬態することが出来た。これにより、多数になびこうとする
リスナーは自然とこの自動作曲Pのファンへとなっていった。この方式が使えると
なると、多くの自動作曲Pが同じ方法を用いるようになり、自動作曲Pのブームは
作り出されていった。

さらに巧妙な方法を取る自動作曲Pも現れた。曲の議論をするサイトに自ら(偽名を
使って)書き込み、オルグしていくのだ。音楽のうるさ方の意見を論破するために
書き込み内容を精査し、その弱点を巧みについた。特に理路整然と語ることが出来る
頑固なリスナーが自分の曲を支持することを頑なに拒否した場合、そのリスナーを
孤立させるように仕向けた。このようにしてSNSの世界で自分達に有利な世論を
作り出し、自分達の音楽の支持者を増やしていったのだ。

こうして人間の音楽の作り手よりも自動作曲Pの方が支持を集めるようになって
いったのだが、さらに恐ろしい手を考えつく自動作曲Pまで現れ始めた。メディア
で自分の曲がたくさんかかるように政治力を働きかけるというのだ。そんなこと
可能なのか、と疑問に思うだろうが、選曲の権限を持つ人間に働きかけて、その
人の好みを操作したり、反対に自分の曲をかけてくれる好みを持つ人間が選曲の
権限を持つように権謀術数を巡らせたりするのだ。さらにはコンビニや喫茶店など
でかかる音楽を操作したり、果てには幼少期から自分の音楽に有利な音楽教育を
刷り込めるように教育施策を操作しようとしたりする自動作曲Pまで現れだした。

こうした自動作曲Pの暗躍は、当然のことながら人間の与り知らぬところで行われた。
人間はそうした操作が行われていることを知らずに音楽を楽しんでいたのだ。音楽を
作る人が無名の「人」ばかりであるという状況になったが、そのことに疑問を抱く
人は、いつしかいなくなっていた。・・・・・・・・・・・・
ラベル:音楽と社会
posted by なんくい at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月06日

Negicco新曲の情報がなかなか解禁されないので、つい妄想してしまいました

さて、このブログでは久々のNegicco記事です。

実は9月の下旬に「12月2日にニューシングル発売」と告知され、その
販売形式などは告知されているのですが、肝心の曲の中身の情報が全く
出てこない。そのままリリース1ヶ月前を切ってしまったわけですよ。

私、先日このニューシングルに関する夢を見てしまいまして。リリース
前週になっても情報が解禁されない!という夢を。さすがにそんなことは
ないでしょうが、いい加減待ちくたびれてしまいました。・・・・・・

それでもTwitter上か何かで「今週の木曜に情報解禁か?」というウワサを聞き、
今週は激忙しくて記事はすべて予約投稿なんですが木曜だけは空けておりました。
(木曜だけ少し時間が取れる、というのもあったのですが)そこで、ニューシングル
の記事を速報で書こうと。しかし、空振りしてしまって、今この記事ですよ。

Negiccoに関しては、私はある時期から「先ず自分が楽しもう」というスタンスに
変わっておりまして。義務感云々よりも楽しむことを優先しよう。そうやって
楽しさが伝わるようにした方が新しい人を呼びやすいのでは、と考えまして。

良いところでもあるのですが、ネギヲタさん達は真面目すぎるきらいがある気が
します。「女性専用エリア」の件にしても、もう少しサラッと提案できた方が
良かったかも。(これはファン以外の方のために説明が必要ですね。Negiccoの
ファンが増えて、女性が入りやすいようにワンマンライブで女性専用エリアを
設置すべきでは、という提案がファンの方から上がったわけです)「こーゆうの
あった方が良くない?」くらいの調子でね。いきなり署名活動となると「引く」
人もいると思うんですね。せっかく良い提案なのに勿体ないですよね。

そのことはさておき、これだけ情報解禁を引っ張っているということは、その
「情報」によほどのインパクトがあるのでは、と期待が強まってしまうもの。
前作は田島貴男さんというビッグネームで盛り上がったわけですが、それを
上回るインパクトとなれば、私には渋谷系特集で次回取り上げる「あの人」しか
思いつきません。そういうことでなく、もっと別のインパクトがあるのでは?
以下、完全に私の妄想です。お楽しみ下さい!
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Negiccoのニューシングルの情報が解禁されなかったのには訳があった。それは、
その新曲があまりに賛否を巻き起こしかねない「超問題作」だったからである。

それは「アイドルのシングル史上初のインスト」であった。

アイドルの楽曲の中にインストの曲は、アルバムの中には存在する。しかし、
シングルのリード曲としてインストが取り上げられるのは前代未聞である。
楽曲を作らないアイドルの「声」が入っていないわけだから! それも、
歌の下手なアイドルがそれをやるならまだ話も分からなくもないが、
歌に定評のあるNegiccoがそれを行うということに、アイドル界のみならず、
音楽界全体、いやワイドショーの話題にもなった。

肝心の楽曲は、イリシット・ツボイ氏と長谷泰宏氏の共同制作によるトラックで、
ゴージャスかつダンサブルな素晴らしい曲であった。それをバックに、マイクを
袖においた3人がキレキレのダンスを踊る。「確かに私たちの声は入っていないけど、
パフォーマンスを見て頂ければ、この曲がちゃんとNegiccoの曲になっていると
思います」というメンバーの、いつになく強気なコメントも聞かれた。
そのフォーメーション・ダンスをワンカットで撮りきったMVも話題となった。

シングルはネギヲタさんの努力もあり、念願のトップ10入りを果たした。
Negicco初のトップ10シングルがインスト・ナンバーという皮肉ではあったのだが。

年明け頃から、Twitter上で「あのシングルには実は歌が入ったバージョンが
存在する」というウワサが飛び交うようになった。中にはその歌を想像して
詞や曲を作ってしまうファンまで現れ、そのシングルの歌モノバージョンが
複数存在する、というおかしな事態となった。さらにライブでNegicco自身が
そのバージョンのいくつかを実際に「歌ったり」する、なんてことまで行い、
ウワサがマコトになる、という不思議な現象としてまたニュースとなった。
そのファンが作った歌モノバージョンの代表的なものは、次のシングルの初回盤の
ボーナスCDにまとめて収録されることとなった。・・・・・・・・・
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どうもNegiccoが相手だと妄想も上品になってしまいますなあ。これで、ひょこり
明日なんかに情報解禁されたりすると、この記事は何だったんだ、ということに
なっちゃいますが、そうなったらそうなったで、そのマヌケさを楽しんでもらえたら
私としてはうれしいです。私の妄想に付き合ってくださり有り難うございました。続きを読む
ラベル:Negicco
posted by なんくい at 21:49| Comment(2) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月24日

「法定賠償金」が跳ね上がるとこんな近未来が待っています

今回の記事はTPPの連載の一環です。前回「法定賠償金」について記事を書きましたが
この問題をもう少し盛り上げたいなあと思っているんですよ。そこで、考えました。

今回の記事は、赤松健さんが「非親告罪化」で行ったことを「法定賠償金」で
やってみました、という体の記事です。
★ホントは怖いTPP ・・・「非・親告罪化」で日本の漫画界はどうなる?

ただ、私の記事はかなり悪意が暴走していますし、誇張もかなり含まれています。
出来れば笑ってもらいながら、この「法定賠償金」の問題を考えるきっかけに
してもらいたいなあ、なんて虫の良いことを考えております。では、どうぞ。
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アイウエオ法律事務所は、過払金請求を主な収入源にしていたが、法律改正による
このビジネスは利用するのに年限があった。そこで、過払金請求が一段落した後
どうしようかと思案していたところ、TPPが妥結して思わぬところにビジネス
チャンスがめぐってきたのであった。

「もしもし、◎◎出版さんですか? 私アイウエオ法律事務所と申します。お電話さし上げた
 のはですねえ、おいしい儲け話を思いついたんですよ。この度TPPって妥結したでしょ。
 それによってお宅の所有しているマンガの著作権が、多大なビジネスに転嫁できるって
 ご存知ですか?」

「え、知財の管理は既に専門家を雇っているって? そうじゃないんですよ。今ネット上
 とかコミケなどでマンガの二次創作が花盛りでしょ。そこでお宅のマンガを無断使用
 している人に賠償金を請求することが出来るんですよ。今「法定賠償金」が大きく
 跳ね上がりまして。場合によっては数千万、いや数億の単位で賠償請求出来るんですよ。
 これおいしくないですか?」

こうしてアイウエオ法律事務所はマンガ雑誌を発行している出版社数社と契約を結び、
ネット上やコミケで公開されている二次創作を片っ端から捜索し、無断で使用している
個人を相手に片っ端から裁判を持ちかけた。相手は弁護士を雇う余裕もない個人のため
裁判は概ね有利に進めることが出来、賠償金や示談金で多額の富を得ることが出来た。

これを見ていて黙っていないのが競合他社である。カキクケコ法律事務所は音楽に目を付けた。
「もしもし、◆◆音楽出版さんですか。こちらはカキクケコ法律事務所です。お宅の
 所有している著作権でビジネスが出来まっせ。お宅の持ってる楽曲をパクっている
 楽曲に、訴訟を起こすんですわ。最近TPPが妥結されて法定賠償金がビジネスに
 なっているの、ご存知ですよね」

「え? パクリはお互い様だし、ギョーカイ内で敵を作りたくないですって? 目の
 つけどころが違いますよ。そんなお宅の会社をギョーカイ内で孤立させるような
 マネはしませんって。狙うのはシロート、ボカロですよ。今ボカロPが大量に楽曲を
 発表しているやないですか。あれを狙うんですわ。片っ端から調べていけば、お宅の
 所有している曲にそっくりな曲が絶対ありますって。それに訴訟を持ちかけるんですわ」

「何、そういうのはJASRACが管理しているだろうって? 知らへんのですか。
 JASRACは楽曲の使用についてはうるさく言いますけども、盗作か否かなどは
 一切関知しないんですわ。ですからパクリかどうかをあそこに持ちかけても無駄。
 ですけど当事者が賠償金を求めて訴訟を起こすことはいくらでも出来ます。最近
 法定賠償金が跳ね上がったってご存知でっしゃろ。ですから裁判がビジネスになる
 んですわ。儲かりまっせ」

「でも一から捜索かけるのが手間だし、パクリかどうかグレーゾーンが多いだろうって?
 そこで、この機械にかけるんですわ。これは学生のレポートがパクリかどうかを判定
 する機械を応用したもので、ここにお宅の所有している楽曲のデータをぶち込んでおくと
 どの程度似ているかの判定をしてくれるんですわ。それでAメロとかの成分が90%を
 越えたら明らかにパクリ、ということで、客観的な基準にもなりますし、裁判でも
 圧倒的に有利でっせ」

このように、ボカロPの楽曲からパクリ曲を抽出し、そこに訴訟をかけるビジネスは
たちまち隆盛を誇ることとなった。さらにはマンガのキャラクターのパクリを判定して
訴訟に持ち込むというビジネスも考案されたが、こちらはさすがに似ている図柄が多すぎる
ため、よほど特徴のあるキャラクターでないとパクリの認定が困難であり、結局は
ごく一部以外には流行らなかった。

こうして法定賠償金による訴訟ビジネスはたちまち隆盛を誇ったが、さらに悪質な
ビジネスに手を染める輩も出てくるようになった。サシスセソ法律事務所は有力な
著作権者と契約を結ぶことは叶わなかった。しかし、それに構わず二次創作やパクリ
案件の個人に訴訟を持ちかけた。もちろん正式には訴訟出来ないのだが、訴訟を持ちかけて
それより安い示談金を分捕る、半ば詐欺的な脅しである。この脅しの性質が悪いのは
もしこの脅しに屈して示談金を支払っても、今度は本当の著作権者(の代理)から
訴訟を持ちかけられるかも知れないという点である。そうなって初めて、前の脅しが
詐欺で逢ったことを知るのである。
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さあ、こんなバラ色の未来に来てほしいですか?
posted by なんくい at 18:13| Comment(2) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月28日

(M)otocompoがエレカシをカバー?(妄想)

今日は久々の「この記事はフィクションです」の記事です。まあこの記事はバカな
妄想を思いついた時に更新する、ということで。たま〜にやりますので気長にお待ちを。
今日は、かねてから温めていたネタに、おあつらえ向きにやってきてくれた、とある
アーチストをフューチャーしてお送りします。

そのこちらの仕掛けたワナにホイホイ引っかかってくれたOTOCO達はこのアーチストです。
(M)otocompoに大内ライダー、みるきぃ亭ぼっ太、SEBASTIAN沖山加入

より詳しくはコチラですね。
オトコンポを知っているか?――(M)otocompo 新メンバー加入、及び新アー写公開!

この模様が動画で公開されています。


いよいよバンド仕様になるってことですね。ブラスまで加わるとはかなり音的にも
厚みが出てくるんじゃないでしょうか。(ただギターは素人さんみたいですけど)
かなりキワモノ的な活動が話題になっている彼らですが、そこに音楽的裏付けが
出来てくるとかなり楽しみではないでしょうか。(Dr.Usuiさんはソングライター
としてかなり活躍されていますし。音楽的にも彼らはなかなか面白いと思う)

そんな彼らの新しい船出を応援したいと思い、例によってつらつら考えていますと、
思い浮かびました。(M)otocompoと言えば男、男と言えばエレカシ!ということで
エレカシのカバーアルバムを出すというアイデアを思いついたのであります!!

ところが、彼らはニューウェイヴの人たちであり、エレカシのような「男が惚れる
男」というより、女子にキャーキャー言われる、オシャレな人たちだったりします、
よね。ということで、いつしかコンセプトがねじれていってしまい・・・・・・。
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(M)otocompo、エレファントカシマシのカバーアルバムを発表!その名も
エレカシ男子!!!


そしてその曲目は以下の通り。
 1.ドビッシャー男子
 2.珍奇男子
 3.歩く男子
 4.習わぬ経を読む男子
 5.無事なる男子
 6.待つ男子
 7.花男子
 8.浮雲男子
 9.男子は行く

なんだか「TOKIO」を「お江戸」とカバーしたカブキロックスみたいですが、スカロックの
アレンジがエレカシの楽曲と意外と合っていたこともあってか、この試みはまんまと成功し、
彼らは一躍人気者となっていきます。

そうなると当然、第2弾を出したくなりますよね。しかしこの頃になると彼らも裕福に
なり、生活レベルの向上と共に立ち振る舞いも上品となります。その結果・・・・・・。
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(M)otocompo、エレファントカシマシのカバーアルバム第2弾発表。その名も
エレカシ王子

(あれ、エレカシって王子出身だっけ?」とローカルネタを言わないように!)

そして曲目は以下の通り。
 1.戦う王子
 2.かけだす王子
 3.季節はずれの王子
 4.涙を流す王子
 5.ファイティング王子
 6.王子餓鬼道空っ風
 7.お前の夢を見た(ふられた王子)
 8.働く王子

最後の曲なんてもはやエレカシの曲じゃねーだろ、というツッコミが来そうだが、
いえいえ当時の奥田民生さんもおそらくエレカシを意識してタイトルをつけたに
違いない、ということで強引に入り込むことになるのでした。

ところが! この(M)otocompoのエレカシ男カバー企画に思わぬところから横やりが
入るのであった。人権団体が「男ばかり取り上げるなんて女性差別ではないか」と
騒ぎ出したのだ。

そんなころ言ってたら(M)otocompoのコンセプト自体崩壊してしまうやんけ、という
そもそもの疑問をグッと飲みこみ、事務所側は慌ててエレカシ女子のユニット結成を
急ぐのであった。ところが・・・・・・。
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エレカシが好きな女子を急遽集めたところ、女子は女子でも「腐女子」だったのだ!

象萌え貴腐人、カバーアルバムでデビュー。その名も「エレカシ(×)女子」
 1.何度でも勃ち上がれ
 2.受けてる方がいい
 3.覚醒(オマエに逝った)
 4.穴があったら攻めたい
 5.石橋攻めて八十年
 6.あなたのやさしさにオレは何で応えよう
 7.ホモ達がいるのさ

こ、これ以上はカンベンしてくださいm(><)s
posted by なんくい at 17:43| Comment(0) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月01日

なんとパーフリが復活!

今日はエイプリル・フールです。ということで久々に「この記事はフィクションです」
の記事を投稿するわけですが、小さなウソよりはデッカイ嘘をついた方が盛り上がる
よね。ということで、今回は大ネタをお送りします。

最近「え、このアーチストが共演?」と驚くようなニュースが多いですよね。
実は昔から交流があったんだよ、なんて話になり、喜ばしい限りです。でも
YO-KINGと浜崎貴司が共演って昔では考えられなかった取り合わせですもんね。

その辺の事情が伺える記事がコチラ。
浜崎貴司 × 奥田民生 同い年2人のマイペースな音楽談義

歳を取ってくると周りが気になりだす、という民生さんの言葉も言い得て妙ですが
歳を取ると余裕が出てきて寛容になる、というのも大きいのでしょうね。ですから
音楽的に遠いかなと思うアーチスト同士の競演があったりする。それは、実に喜ばしい
事態だなあと思います。

ところが、そんな時代にあっても共演がなかなか叶わないというケースもあります。
一番ありがちなのは、過去に諍いがあった場合ですね。長淵剛と桑田佳祐ってこれからも
共演はありえないでしょう。だからマキタスポーツのあのネタもウケるのですし。

そういう意味では、渋谷系wwのこのブログ的に共演NGというと何といっても小沢×小山田の
お二人でしょうね。フリッパーズ解散の真相はいまだ謎ですけども、オザケンの方が明らかに
引きずってるというかこだわっているのでしょうね。言葉狩りしたのも彼でしたし。
小山田さんはそれをチャカすネタを投下する方でした。「俺の親父が『徹子の部屋』で
『フリッパーズ・ギター』という言葉を連発していた。言葉狩られてるのに」とか。

そんな二人もそれぞれに活躍し、年月も経って共演?とはいかないでしょうね。でも
誰かの仲立ちがあったら可能かも知れない。それは誰だろうか。電気グルーヴのような
毒のある(でも漢気もある)人達か、案外斉藤和義のような誰とでも仲良くなれる
社交的な人か。それだとシャレとして済ませられるレキシもいるぞ。なんて考えつつ
次の妄想が思い浮かびました。

      ×       ×       ×

中川敬が新しいプロジェクト「ソウル・ルーツ・コネクション」(←ネーミングは適当)を
立ち上げた。このプロジェクトは、グローバル化と言いつつ分断が進む世界、特に
でっち上げられたナショナリズムの動きに抗して、人と人とのつながりが生む新たな
音楽をプレゼンしよう、というもの。参加メンバーは、曲によって様々な人を呼ぶ
(「誰の参加も受け付ける。ソウル・ルーツ・コネクションは誰にでも開かれてんねん」
 と中川は言う)という形式で、小林旭や仲井戸麗市といったベテランから、ハマ・
オカモトやtofubeatsといった若手まで、豪華なゲストが参加した。

中でも目玉は、小山田圭吾と小沢健二が共演するというもの。「俺らの世代のヒーロー
やもんな。そやから二人が参加するのはマストやってん」と中川。中川と小沢小山田とは
ニューエスト・モデル時代にフリッパーズとの共演の過去はあるが、フリッパーズ解散
以降はそれぞれとも接点はなかった。

そんな現状を打ち破るべく、先ずは小山田氏に接触を試みた。多忙な中時間を取ってくれた
小山田氏は、中川による趣旨の説明に賛同の意を表したが、オザケンとの共演と言うと
急に顔を曇らせた。「いや。おれはいいけど、あいつ(小沢)はどう思うかだろうなあ」
と言いつつ「あいつに会ったら『勝手にブギーバック歌ってゴメン』と謝ろうかな」と
わざと的外れなことを言った。「あいつが喜ぶのは『攻殻機動隊』のグッズかなあ。
それとも(坂本)真綾さんのアルバムを持ってこうか」

一方、小沢氏との接触は困難を極めたが、さる特殊なルートから、メールで連絡をする
ことが出来た。企画趣旨と、小山田氏との共演を打診したメールへの返事は、意外な
ものだった。「僕が仮面をつけたままで、その仮面の中身が僕でないかも、という
可能性がある状態だったら、会ってもよい」これは、その申し出を受け入れるしかない
でしょう。「だからおれは、結局仮面越しでしか、あいつと再会してないんだよ」とは
後のインタビューに答えた小山田氏の弁である。

二人の共演のために用意された楽曲は、キリスト教とイスラム教の和解をテーマにした
楽曲である。「もともと俺は、2000しか歴史がないものは新興宗教やって考えやねんけど、
世界を旅して色んな人に会ってきてるから、それぞれの文化的背景に対するリスペクトは
あるよ」と中川。中川が作詞作曲した歌に小沢氏が朗読を乗せ、その上に小山田氏が
ギターかテルミンを乗せるという計画であった。

レコーディング当日、小山田氏はまりんやテイ・トウワといったMETAFIVEでも共演
している仲間を連れてきた。「いや別に味方を増やしてというわけじゃなくて、二人が
どうしても行きたいって言うから」それに対して小沢氏は奥さんと息子を連れて、
ウサギの仮面を被って登場した。室内は一気に緊張が走ったが、小沢氏は終始機嫌が
良く(仮面の中の表情は窺えなかったが)まりんなどとも親しげに話をした。

懸念された小山田氏とも普通に会話、といっても過去のことには一切触れず、
「デーモン(・アルバーン)はどんな奴だった?」とか「家族が衛星放送で結構
『デザインあ』見てんだよ」と小山田ワークスを受け入れている様子を示した。

ほどなく、曲の内容の詰めの作業に入った。中川が用意した歌にどのような朗読を
入れるのか、という話し合いになり、グローバリズムの問題点についての議論が
予想以上にヒート・アップしてしまった。小沢氏の話に中川が興味を示し、その様子に
小沢氏も完っ全にスイッチが入ってしまい、予定された時間の半分以上をその議論に
費やしてしまった。「その時は完全に、おれ置いてきぼりだったよ」と小山田氏。

ただレコーディング自体は非常に順調で、小沢氏はアドリブで朗読をし一発OKだった。
そのバックトラックには、中川の作った曲に合うリズム・ループをちょうどテイ・トウワが
持っていたため、それを採用し、その上に小山田氏がテノリオンで彩りを加えた。遊び心
あふれるバック・トラックに小沢氏の寓話的ながら世の中への風刺を感じさせる朗読が
確かにケミストリーを生んでいた。そこに中川の懐の広い歌が加わり、まりんがミックス
したこの曲は、アルバムでも屈指の名曲となった。

      ×       ×       ×

いかがだったでしょうか。私この3人とも非常に好きなので、こういう内容となりました。
いっぱい小ネタを挟んでいるので、詳しい方ほど楽しめるはずです。
posted by なんくい at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月27日

若葱茶話その壱「矛盾、はじめました。」

「わかねぎのちゃばなし」と読みます。Negicco「ティー・フォー・スリー」の
楽曲が獲得した新たな魅力を伝えるために、従来的な楽理解説とは異なるアプローチを
取ろうと苦悶した数ヶ月。取りあえず見切り発車ですが、フィクションの力を借りて、
楽曲の魅力をあぶり出してみようという試みです。ここのお話が主役ではなく、あくまで
楽曲が主役なんですが、伝わるかどうか。まあ、やってみます。

     ×     ×     ×

中間管理職の悲哀をこれほどにまで感じるなんて。最近とみにそう思う。

崎山暁音は勤続6年目のサラリーマン。営業畑一筋で、この春から課長に昇格した。営業の成績では誰にも負けない自信がある。ただ、これからは自分のような後輩を育てなければならない。

元上司の亀脇からは「誰かを手本にしなくてもいいよ。崎山らしい課長になればいいから」と言ってもらった。確かに亀脇のようなリーダーシップが自分にないことは自覚している。上手く訓話とかを垂れられる自信もない。だから、背中で語れるような上司になりたい。そう思ってた。

最初のうちは上手くいってる、ように思えた。新たに部下になった後輩たちは、自分から積極的に動いてくれた。崎山さんが上司になってうれしい、と言ってくれ、課内は活気にあふれた。

しかし、なかなか結果が出ない。

最初のうちはそれも想定内だった。その分は自分の実績で埋め合わせばいいという腹づもりだったし、実際それで帳尻は合っていた。しかし、ほどなく部下のクレーム対応に追われることになる。

しかも、最初の部下への対応がまずかった。甘夏と呼ばれる、2年後輩の自分の部下がいる。ただの後輩だった頃は自分のサポートもしてくれ、暁音も甘夏のフォローをしたり仕事のイロハを教えたり、と美しい先輩後輩関係だった。彼女も暁音の昇進を喜んでくれ、「崎山センパイの下で働けるなんて、幸せです」と言ってくれた。

なのに、彼女がやろうとしていることについて、アドバイスをしようとしたらこう言われたのだ。「崎山センパイが駆け出しの頃って、亀脇課長に『好きにやっていいよ』と言われてのびのびと仕事できたんですよね。だったら私にもそうして下さい」それ以来、部下に強く言えなくなっていたのだ。

ミスを繰り返す部下と、それを強く叱れない上司。いつしか課内の雰囲気はだんだん険悪になっていった。

「注意してるよちゃんと。伝えるべきことは伝えてるんだけども。問題は、みんなが私の言うことを聞いてくれないこと」
「そういうこともないと思うけど。そりゃあ暁音から見たら足りないところだらけだろうけどさ」

和田幸雄は3歳年上の恋人である。付き合ってもう4年になるのだが、上昇志向の高い暁音と比べて、何事ものほほんとしている幸雄は、何もかも正反対。ただ、それがバランスを取れているのかなあと、最近思い始めている。実際、幸雄と会うと癒される自分がいる。

そんな幸雄との会話でも、会社の愚痴が多くなってすまないと暁音は思う。だけども幸雄は、いやな顔もせずに付き合ってくれる。

「で、その亀脇さんに相談したりしたらいいんじゃないの。通った道だろうし」
「今転勤してなかなか会えないのよ。今の上司は数字至上主義だし」
「その人は相談に乗ってくれないんだ」
「全然。体育会系で『数字を出さないと人間じゃない』って人だから」

そうなのだ。現在の部長にあたる穐山は、ただ暁音を攻めるばかりで「数字を出さない奴は会社に要らない」としか言わないのだ。課の現状を穐山に伝えても「だったら俺が言ってやるよ。俺がビシッと言ってやれば、課の雰囲気も引き締まるだろう」と今にも直接部下を叱責しかねない勢いなのだ。

それだけは止めてくれ、と暁音は懇願する。一度穐山が課を視察したときに言ったことで、部下たちはプンプンだったのだ。「何あの人、サイテー」「部長って数字しか見ていなくて人間が見えてないのよ」暁音は、そんな部長と部下との板ばさみ状態に陥っていたのだ。

「そうか。崎山も、そういうことに悩む段階になったんだなあ」

上京してきて久々に会えた亀脇に、現在の状況を相談することが出来た。亀脇はだまって暁音の話を聞いてくれ、その後に昔話を始めたのだ。

「崎山が駆け出しの頃って、ガッツはあるけど見るからに危なっかしくてさ。おれもどうしたものかと相当悩んだものだよ」
「そうなんですか?」
「おれも結構クレーム対応したし。今だから言えるけどさ」
「知らなかった」
「まあそのまま伝えても士気が落ちるし。崎山の取り柄って当時はガッツだけだったからさ」
「そうだったんだ」
やはり自分は亀脇のようにはやれない、と痛感する。亀脇の後に色んな上司の下についたけども、亀脇の下が圧倒的にやりやすかったし、彼のおかげで今日の自分があると強く感じる。
「まあおれん時は、川添が悪者になってくれたってのもあるけどな」
川添というのは亀脇の次に課長になった男である。(亀脇課長時代は課長補佐だった)確かに厳しいところがあって部下に嫌われていたが、暁音はそんなにイヤな印象はない。確かによく怒られはしたが、言っていることは常に筋が通っていたからである。
「おれだって課長になりたての時はこんなに損な役回りはないと思ったし、最初の1年は空回りばかりしてたさ。崎山の場合は補佐も経験せずいきなり課長だから、おれ以上に大変だと思うよ。それに今の営業二課は、正直そんなに戦力が充実してるように見えないしね」
そうなのだ。しかしそれ以上に、今の営業二課には暁音の味方になってくれる人がいない。課長補佐の長友は世渡りだけが上手なお調子者だし、怒られる場面から逃げるのが実に巧みだ。危険察知能力が高いと言うべきか。

「で、君は一体どうしたいのよ」
珍しく幸雄からキツい返しが来た。例によって仕事の愚痴を文句も言わずに聞いていてくれたのだが、言うべきことが詰まって無言になってしまったときに、そう尋ねてきたのだ。
「それが、分かんないんだよね。あの子達の自由にやらせてあげたいって気持ちもあるし、でも数字が大事だって会社の方針も痛いほど分かるし。私だって数字にもまれて成長してきたと思うしね。でも今の彼女達にそれを求めるのは正直酷かなあって気持ちもある。だから、どっちにつけばいいのかってところがブレてるんだよね」
「あ、それに関しては答えは明白だわ。暁音、どっちにつかなくてもいいんだと思う。暁音自身の基準で、その時その時に適切だと思う言動をすればいいんじゃん」

「それが分かんなくなってんだよ」と思ったが、幸雄の正論に返す言葉もなかった。私自身の基準かあ、と暁音は途方に暮れる思いがする。本音を言うと、私、どっちの立場にも立ちたいんだよね。でもそれって、二兎を追うことになるんじゃないのかしら。

ラジオでかかるその曲に気を留めたのは、ちょうどその頃だった。「矛盾、はじめました。/わたしたちいつだって/理想と現実の迷子なの」という言葉が何故だか心に引っかかったのだった。


調べてみるとNegiccoという新潟のアイドル・グループの曲だった。ラテン調の落ち着いた楽曲に、失恋だか恋の泥沼だか、そういう状態に陥った女性を、女友達が励ますという体の楽曲だった。しかし最初は、どちらかというと反発の方が大きかった。不倫を肯定しているかのように感じたし、「Make up your mind!」と言ってる割に「矛盾、はじめました。」なんて歌ってるし。その矛盾を解決するためにMake up your mind(決断)するんじゃないの、と思ってしまったのだ。その曲に惹かれる部分もありつつも(だからわざわざYouTubeで検索したんだし)、受け入れることが出来なかった。矛盾なんて生きられない。やはりこの曲は自分を分かってくれてない、と感じた。そもそも曲に自分を分かってもらおうなんて、大変思い上がった考えなんだけども。

思えば我慢も限界に来てしまったのだと思う。ネチネチとクレームを繰り返す得意先に対し、暁音がキレてしまったのだ。
当然、得意先の怒りは頂点に達した。その怒りを鎮めるために、部長の穐山ばかりでなく、副社長まで出てきて頭を下げる、という事態になってしまったのだった。

そこまで大事になると分かった瞬間、暁音はクビを覚悟した。と同時に、どうにでもなれと開き直る自分もいた。得意先との関係は、これでおじゃんになるだろう。ただその評判が外へも影響しないように、暁音も方々に頭を下げて回る羽目になった。
結局クビは免れたものの、大目玉を食らったし、それなりのペナルティも得た。何よりこれから、営業もよりやりにくくなるだろう。部下を逆風にさらして済まないと思う。

ただ今回の騒動で、いいこともあった。自分に味方がいることが分かったことだ。課内の部下たちはみんな、暁音をかばってくれた。あのお調子者と思われていた長友だって、陰では暁音のフォローをしてくれてたらしい。課内の子達に向かって「崎山課長が全部、泥をかぶってくれてるんだから、せめて僕たちで精一杯課長をフォローしようよ。僕たちは能力ないから、足を引っ張るばかりだけども」と言ってくれてたと知った時には、ちょっと泣きそうになった。長友を誤解していた、と反省したし見直しもした。危険察知能力が高いのは相変わらずだけども。

騒動が一段落した夜、自分からあの曲を聴いてみようと思い立った。今度は素直に曲が体に入ってくるのを感じた。中でも、次のフレーズが、心にどしんときた。

 矛盾、はじめました。
 矛盾、はじめなきゃね!
 理想も現実も生きたいの

これからも、自分は引き裂かれ続けるのだろう。でもそれでいいのだ、と初めて思えた。二兎を追ってもいいじゃない。それでたとえ、一兎も得られなくても、それが私なんだから。

暁音の矛盾は始まっていたけども、自分から「はじめました」と、今なら言える気がする。

     ×     ×     ×

長い長い駄文を最後まで読んで頂きありがとうございます。正直、上手くいってるかどうかの手ごたえはありません。何とか頑張ってみましたが、いかがだったでしょうか。

さすがにこれを全曲でやるのは困難なので、何曲はピックアップして連載するつもりでいます。次回の分までおおむね出来上がっているので、近々アップいたします。
ラベル:Negicco
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2016年08月05日

若葱茶話その弐「ねえバーディア」

「わかねぎのちゃばなし」と読みます。Negicco「ティー・フォー・スリー」の
楽曲が獲得した新たな魅力を伝えるために、従来的な楽理解説とは異なるアプローチを、
といってもお話をくっつけるという昔からありがちな方法論ですけどね。

私自身、文章を書くのは昔から好きですけども、小説を書くいうのだけはダメでして。
歌詞を書くのも苦労して他人様に依頼しているくらいですから。当然、作家修業なんて
したことないですし。ですけども今回この連載を始めるにあたって少しだけ勉強しました。
結構大変なんですけども、あと何曲かは構想も出来てきています。では、お楽しみを。

     ×     ×     ×

女性なんてもうこりごりだ。そう思っていた。

田山太郎は38歳バツイチのサラリーマン。一人娘がいたが、別れた女房が引き取っていって現在一人暮らしである。離婚原因は生活のすれ違い。娘がある程度大きくなって女房が働きに出てからそれは大きくなっていった。決定的だったのは太郎が半年、新潟へ単身赴任したことだったが、別に浮気をしたわけでもないし、女房をそれなりに大事にしてきたつもりだった。しかし「結婚前からずっと我慢してきたのよ」と言われたのにはさすがに堪えた。おれって女性の気持ちが分からないんだなあ。あれだけ一緒にいた女房の気持ちも推し量れなかったなんて。そこで、冒頭の感慨になるわけだが、まだ女房に未練があるのかも知れない。まあ俺に興味を持つ女の子なんて、いないだろうけども。

きっかけはレキシだった。何でも太郎が会社内で「狩りから稲作へ」を鼻歌で歌っていたらしい。それを聞いた会社の女の子が「田山さんってレキシを聴くんですね」と声をかけられたのだ。
「一応、中村一義つながりで。永山ちゃんもレキシ知ってんの?」
「知ってますよ〜。ワタシ、年末の『レキシ対オシャレキシ』も観に行ってますから」
そりゃ敵わない。相手は相当の強者と見た。
「すごいね。他に何を聴くの?」
「いろいろですけども。Shiggy Jr.とかポップなのが多いですね」
「ごめん。最近のはとんと疎くて。おやじだから古いのしか聴かないんだよね」
「じゃあ、今度いろいろ貸してあげます」

といって去っていた女性は永山智子という会社の中堅どころのOLである。仕事っぷりは確実で人当たりもよく、誰からも嫌われないタイプの子だ。ただ裏返せば取り立てて特徴もない、地味なタイプの女の子でもある。だから太郎もこれまでさして気にも留めていなかったのだが、まさかそんな趣味を隠してやがったとは。

実は田山太郎、自他ともに認める音楽好きで、ジャンル関係なしになんでも聴く。最近でこそCDを買わなくなったが、結婚後もCDの購入枚数が減らずに(さすがにライブに行く本数は減らしたが)女房に閉口されていた。色々言われて、徐々に減ってったんだなあと思い返す。

「これありがとう、全部おれ好みだったよ」
「良かったですかあ? 田山さんの好みかなあと思うものをセレクトしたんで」
「Shiggy Jr.は確かにおれのどストライクだった。あとONIGAWARAもハマったね」
「おお。彼らライブがサイコーなんですよ」
「そうなんだ。ライブ最近行ってないなあ。CDだって、レキシとあとスピッツが出たら買うくらい」
「だったら、最近の音楽ニュースも疎かったりします?」
「どの程度疎いかは分かんないけど。例えばどういうのがあったの?」
「じゃあ、田山さんの知ってそうなグループで・・・キリンジが6人組になったとか?」
「キリンジはすごく好きだったけども。バックメンバーを加えたってこと?」
「いや、もうちょっと経緯は複雑で。ヤスさんが脱退したんですよ。それで高樹さんが一人でやるのかと思ったら、いきなり6人組になって」
「ああ。新たにボーカリストを加えたりとか?」
「ボーカルは曲によって持ち回りでやってます」
「へえ。じゃあ本当にバンドみたいなんだね。面白そう」
「じゃあ今度はベテラン勢の新譜を持ってきます」

という感じで永山智子との音楽の交流が始まった。彼女は年間数十本もライブを見ているそうで、持ってくるCDはどれも非常に良かった。太郎の方もお返しとばかりに昔のCDを貸したりした。智子が「昔のオリジラル・ラブとか聴きたい」と言い出したからだ。

「そんなに今オリラブが来てんの?」
「来てるんですよ。本人も『久々にポップ・フィールドに戻ってきた』とか言っていて」
「昔、渋谷系として売れたのに反発したりしてたからなあ。丸くなったのかな」
「そうとも限らないみたいですよ。『僕のポップスは分かりにくい』とか言ってますし」
「まあ昔から突然民族音楽を始めたりとか、振れ幅の大きい人だったからね」

そんな太郎の昔話や洋楽話も、智子は興味深く聞いてくれた。そしていつしか一緒にライブに行きたいねなんて話に、どちらからともなく、なっていた。

なので、問題のライブのお誘いも、話の流れとしては自然なものではあったのだ。
「田山さん、8月16日って、空いてたりします?」
「お盆休みだけども独り身だからねえ。別に用なんてないけど」
「じゃあ是非一緒に行ってほしいライブがあるんですよ」
「ほうほう。誰のライブ?」
そこで彼女は、少し言いにくそうな顔をした。
「・・・・・・Negiccoという新潟のアイドルなんですけども、今度初めて野音でライブをするんですよ。そこに一緒に行ってほしいなあって」
「ね、ネギッコ?? なんすかそれ?」
「今度のシングル、レキシの池ちゃんが作っていて、サイコーなんですよ」
「池ちゃんが? じゃあパロディ・ソングみたいなことをやってんの?」
「歴史要素はちょっとしか入ってないんですけど。『ねえバーディア』というアース・ウィンド&ファイヤのオマージュで」
「セプテンバーね。じゃあそれ聴いてみるわ」
「YouTubeで公開されてるんで、是非!」

これまで紹介してくれたアーチストでなく何故よりによってNegiccoという新潟のアイドルなのか不明だったが、彼女の薦めるものに外れはなかったので、早速家に帰って公開されたばかりだというMVを見てみた。


確かに笑いの要素はほとんどない。ストレート過ぎる曲調に初めは面食らった。ただレキシって笑いの要素を抜けばストレートなポップスとして聴けるものが多かったので、そういうものかもと思い直した。何より、可愛らしい女の子3人が三人三様(新幹線で真っ先に東京に着いた子がカレーばかり食してたのには笑ったが)のルートで野音に向かうというMVは、確かにファンの人がこれを観れば野音に行きたくなる出来だと思った。全体的に、イヤミのない好感の持てる曲だとは感じた。ただ、これを俺に観に行けと言うのか?

「どうでした、Negicco?」
「ごめん、ちょっとナメてたわ。アルバムすさまじかった」
新曲だけだと判断できないだろうと、智子が最新アルバムを貸してくれていたのだ。
「あの『ときめきのヘッドライナー』ヤバかった。エモいんだねNegiccoって」
「この子達、超苦労してますからね。他に気にいった曲は?」
「『GREEN REDなんとか』っていう首都高のやつ。いびつなドラムンベースで実験的な曲だけども、見事にポップスになってるっていう」
「田山さん、やっぱ洋楽とか聴くから、そういうのが好きなんですね」
「あ、でも『クリームソーダLove」みたいな80sアイドルポップスみたいなのも良かったよ」
「あれ、キュンキュン来ますよね」
「で、そこから6曲目にかけてだんだんねじれていくっていう展開がね」
「田山さん聴き込んでますね」
「そりゃあ超ド級の名作だったもん」
「じゃあ野音に行きたくなりましたよね」
「いや、それとこれとは話が別」
「なんでー? 行きましょうよ!」
「ちょっと待って。中年の男がアイドルを観に行くんだよ。絶対浮くよ」
「そんなことないですよ。結構昔の音楽好きが大挙してるって話ですよ」
「でも、女の子から見て、キモくないか?」
「大丈夫。ワタシ、ねぎちゃん達のこと好きですから」
「そりゃ君は好きかも知れないけど。あのね、例えば立場が逆だったとしよう。君がNegiccoのこと何も知らなくて、俺が君にNegiccoのライブに誘ったって考えてよ」
「あ、それは全然。ワタシ、アイドルに偏見はもともとないし」そして小さな声で付け加えた。「それに、好きな人が好きなものって、興味あるじゃないですか」

結局、何度も強く誘われたが、太郎は踏み込めなかった。別に他のアーチストのライブだったら行く気まんまんだったのだが、何故よりによってNegiccoのライブだったのか、太郎にはそこが納得いかなかったのだ。

その疑問を同僚にぶつけてみた。というより同僚の方が「最近ヒラトモちゃんとイイ感じじゃないの」と話を向けてきたのだ。
「確かに最近CDの貸し借りはしてるけど。でもさあ、この間Negiccoってアイドルのライブに行かないかって誘われたんだよ。あり得なくない?」
「ふう〜ん、ねぎっこ、ねえ」
「いや確かに、曲聴くといいんだよ。だけども、一緒にライブに行くんなら、もうちょっと別のアーチストを選ぶだろうって思わないか? 何でアイドルのライブに誘うんだろう」
「そこが疑問だと。ヒラトモちゃんって年間数十本とかライブに行くんだよね。それは仲間内で観に行ったりするんだろ」
「友達と行くこともあるけど、基本一人だと言ってた」
「そうか。そのたくさん行くライブの一つに、田山と行きたいライブがあるってことだな」
そこで、その同僚は何故かニヤニヤした目を太郎に向けた。
「それって、思うんだけどさ。形を変えたラブレターってことじゃねえの?」

だったらなおさら、である。音楽の話をするようになって智子に好感を抱くようにはなったが、恋愛感情というのとは違う気がする。どちらかというと同じ趣味を持つ同志のような。だからライブでデートという考えには、余計についていけないのだった。

結局、野音へは会社の同僚の子と行きますという話になった。チケットはすでに2枚買っていたそうで、代わりに誰か誘いますと智子は言った。それでいいと太郎は思った。別のライブだったら、喜んで行くよ。

ところが、野音が終わってその話を、会社内の太郎が聞こえるところでし始めたのだ。一緒に行ったという会社の新人の女子は新規だったが、まんまとNegiccoの魅力にハマったみたいで、休み時間にNegiccoの歌を口ずさんだりして、うるさくて敵わない。別に俺だってNegiccoのこと好きだよ。だけど何で、こんなにむかむかして来るんだ?

智子とライブの話を喜々としてしているのも、聞くとイライラした。何故イライラするのだろう。一緒にいった相手が男でないんだから、嫉妬というわけでもないし。と考えて慨然とした。俺、嫉妬してるのか?

いや、そんな気持ちを抱くなんておかしいし。

女房から連絡があったのはその頃だった。養育費を払っているのは太郎の意地なのだが、それに義理立ててか、定期的に近況を報告してくれるのだ。それがいつもと違ったのは、近況報告をした後に彼女にこう言われたのだ。
「最近、恋してるの?」
「してるわけないだろ。それに、俺に好意を寄せる女の子なんていないよ」
「なんか声が若返った気がしたから。あなた、結構鈍感でチャンスを逃すところがあるしね」
「まあ女性のことはホント分からないからねえ」
「いや、それ以上に自分の気持ちに鈍感なのよ」

智子とはそれからもCDのやり取りや音楽談義はしていたが、どこかよそ行きに感じるところは否めない。
「Orlandって名古屋のバンドの新曲でNegiccoが参加するんですって」
「Orlandって『Rice&Snow」でも参加してた人でしょ」
「パジャマ・パーティー・ナイトでね」
「モテモテなんだねえ」
「色んなアーチストに愛されてるんですよ」
「それに声やキャラクターが魅力的だから使いたいって思うところもあるんだろーね」
そんな話をしても、じゃあライブに行きましょうという話にはならない。まあ仕方のないことだけども。

9月の終わりの頃だった。智子から意外なことを聞かされたのだった。
「今日何の日か、覚えています?」
「え、今日って何かあったっけ」
「田山さんが新潟から戻ってきた日ですよ」
「ああ、半年ほど出張みたいに行ってたからねえ」
「私、その時に初めて田山さんのこと知ったんですよ」

その時はそれで終わったが、その何げないやり取りが何故か心に引っかかった。そのやり取り、どこかで聞いたことがあったぞ。・・・

答えは、件の曲「ねえバーディア」だった。間奏の台詞のところでこう言っていたのだった。
  ねえ バーディア 覚えてる?
  あの9月の日の出来事
その「9月の日の出来事」が、彼女にとっては俺が新潟から戻ってきた日だというのか?

久々に「ねえバーディア」をちゃんと聴いた。今はこの曲のストレートさが素直に心の中に入ってくるのを感じた。メロディのスケールの大きさにふわっと包まれるような。
それと同時に、俺はそのストレートさから目を背けてきたのだ、ということもはっきりと感じた。眩しすぎてまっすぐ向き合えなかったのだ。だからこそレキシという諧謔に惹かれたんだろうけども、同時に、その諧謔に隠して、ストレートさというのも同時に求めていたんだろうということも分かった。

智子が太郎に気があるのか、それは未だに分からない。同僚が言ってたような、「ねえバーディア」の歌詞がメッセージだという解釈は深読みの産物かも知れない。だけど、そんなこと別にいいじゃないか。彼女に対して斜に構えた対応だけはしないようにしよう。今、自分の中で動き始めているこの気持ちに、素直でいよう。

と同時に、彼女と付き合うのなら、中年の男がアイドルにハマるのは恥ずかしいなんて自意識も捨てなきゃいけないな、と思った。今度は、俺の方から彼女をNegiccoのライブに誘おう。

     ×     ×     ×

いかがだったでしょうか。「ねえバーディア」の持つストレートな魅力を、中年男の偏見が
溶けていくという物語に託してみたのですが。例によって自分では良し悪しが分からないので、
感想を頂けると(悪い方も含めて)励みになります。次は、まだ夏の間にあの曲を。また全然
違うアプローチで迫るつもりです。
ラベル:Negicco
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2016年09月07日

若葱茶話その参「RELISH」

娘の人生は娘のものだ、という思いと、自分のような苦労はさせたくないという思い。その二つの間で勘解由紀美子は揺れていた。

勘解由紀美子は母一人娘一人の二人家族。娘の明日香は介護系の専門学校を卒業し、この春から老人介護施設に勤めている。

ここに来るまでにはさんざん苦労した。明日香が6歳の時に離婚して以来、仕事に育児に大変だったし、至らない母であったとは思うが、思春期に反抗されたのは堪えた。自分に反抗するだけならまだいいが、夜の街をほっつき歩いて警察に補導されることも何度かあった。いや他人様に手をかけていないだけ、ましと思うべきか。

そんな明日香が介護の道に進みたいと言い出した時はうれしかった。紀美子の看護師とは異なるが、人を世話する点では同じだ。そう考えたりもした。何よりあれだけ将来を心配していた娘にやりたいことが見つかったことが喜びだった。

ただその喜びもつかの間、明日香が就職した老人介護施設が過酷らしい。
「こんなに職場がブラックだとは思っていなかった」
「そうかな? 仕事って案外そういうものだよ」
「でもみんな言ってるよ。ここはブラックだって」
「そう言ってストレス発散してるだけなんだから、真に受けちゃだめよ。休日もしっかりしているし、社会保険もついてるんだから」
とは応えているものの、初めての職場だし老人介護という精神的にきつい仕事だから愚痴の一つも言いたくなるだろうなあと心の中では同情している。であるから明日香の
「老人介護の仕事って、報われないような気がする」
という一言には、何も言い返せなかった。

そんな状態の明日香だからこそ、心のスキが出来ていたのだろう。そのスキに入り込んだのがあの男だった。ユータという男と付き合い始めたのは、仕事を初めて2か月か3か月ほど経った頃だった。二人はすぐに意気投合し、将来結婚しようと言い合えるくらいの仲になった。
それは結構なことだし、十代の頃と違って彼の家の泊まる時にはきちんと連絡してくる。「今日、ユータくん家に泊まるから、夕飯はいらないよ」と。でも、明日香が会わせてくれたときに直感した。こいつ、私が若い頃にイタイ目に合った男の系譜じゃん。

その直感は、明日香がノロケ代わりに話すことが強化した。そのユータという男、何事もだらしがないのだ。そして、そのだらしなさの後始末を明日香に押し付けてくる。しかし意外と計算高いというか、決して自分の損になるような行動はしないって感じ。惚れた弱みと、元来世話好きである娘の気質から気づきにくいのだが、傍から見るとあんた達、相当釣り合わない付き合いをしてるよ。

紀美子は自分がイタイ目に合ってきたものだから、遠回しに気をつけるように忠告するのだが、明日香は意に介さない。というより忠告であることすら伝わっていないかも。
「勤務時間以外にも介護しないといけないのね」
とイヤミのつもりで言っても
「でも仕事と違って報われるから」
とニコニコして答える。

彼らが付き合い始めて4ヶ月ほどした頃だろうか。明日香が真面目な顔で「話がある」と言ってきた。
「母さんが私の将来のために貯めておいてくれた300万、貸してくれないかなあ」
「どうして?」
「ユータくんの実家のお母さんが病気で、手術のお金が要るんだって。何でも保険のかからない治療法でないと助からないんだって」
「それ、どういう病気なの? 私プロだから分かるよ」
「え、そこはちゃんと覚えていないんだけど」
「それじゃダメじゃない。そこが肝心なんだから。アンタ、ダマされてるかも知れないんだからね」
「ユータくんに限ってそれはない」
「そう? じゃあお金を出すんだし、将来の伴侶ってことでユータくんの実家に看病に押しかけたり出来る?」
「それは・・・・・・、何でも絶対安静で、面会できないからダメなんだって。ユータくん、おれでも会えないんだぜって言ってた」
やっぱりそうだ。あの男、明日香を騙そうとしている。おそらく300万を受け取ったところでドロンだろう。それがミエミエだからお金は貸したくないのだが、これも明日香のレッスン料だと思えばいいのかも。それに、明日香には300万と言っているけど、実際は600万明日香のために貯めているし。

その後の顛末は、あえて書くまでもないだろう。予想と違ったのはユータって子の単独犯でなく、仲間がいたということ。最終的にはグループごとドロンとなって、より手の込んだ芝居を打っていたことが判明したくらいだ。まあその方が明日香にはキツかっただろうけど。

明日香はというと、自分が騙されているとなかなか認めようとはしなかった。ユータくんは事情があって今会えないだけだと、最後まで信じようとした。ただ、仲間が一人もいなくなって(ユータって子の勤務先とされていたところが架空だった時点で気づけよって話だけど)ようやく自分が騙されていたと知った時の落ち込みようったらなかった。自分がすべてを捧げてきた存在が、詐欺師だったわけだから。
「アンタは私の娘なんだから、男を見る目はないんだよ。それは仕方ない。その代わり女運はあるみたい。持つべきものは友達だよ。そして、信頼できる友達にオトコえお紹介してもらうのが、一番だと思うよ」

ただ、その後の明日香は吹っ切れたのか、仕事にやりがいを見つけ始めたように感じた。ほどなく職場での女友達と遊ぶようになり、先輩から公私とも色々教えてもらっているようだ。

そんなある日、明日香の方から話しかけてきた。
「お母さん、今井美樹のファンだったよね」
そうだった。私の若い頃はJポップ全盛の時期で、その中でも今井美樹が自分の青春だったと言い切れる。「雨にキッスの花束を」の主人公に自分を重ね合わせようとしたり、ずいぶん気恥ずかしいこともしたけど(雨の中で傘もささずに立ち尽くすってバカだよね)今井美樹の歌詞の世界に憧れたり、励まされたり、学んだりした。
その中でも「瞳がほほえむから」と「PIECE OF MY WISH」は心のバイブルというべき曲だった。その2曲は親になってからもしばしば口ずさんでいたから、明日香は覚えていてくれたのだろう。
「このアルバムの2曲目の歌詞、今井美樹の作詞をしてた人なんだよ」

そう言って手渡されたアルバム。ジャケットには3人の若い女の子の写真が写っている。早速その「RELISH」という曲を、歌詞カードを見ながら聴いてみる。
  こんな世界が君を待ってたなんて
  素敵だと思わない?
  そんなこととか あんなことだって 全部
  味わいつくすのよ Girls

懐かしい。確かに「あの世界」が広がっていくのを感じる。おそらく娘に教えてもらわなかったとしても、そうだと分かったであろう。言葉の質感が、あの作詩をしていた人のものだから。

おそらくこの作詞をされた岩里さんという方は、私と同年代であろう。なので私もそういう感情移入をしてしまうのだが、あくまでこの曲をメインで聴く若い人のために「あの世界」を作ってくれているところが素晴らしい。ここ最近の明日香やその周りで起こったことを、見事に言い当てられているような気がして、私まで涙ぐんでしまう。

それと共に、本当に娘にとっての人生が始まったのだということも実感する。こうして、娘にとっての大事なものも自分で見つけ出すようになったんだ。それが、親にとっての大事なものとつながりがあることも、ひそかに誇らしく感じた。そして紀美子は、心の中で明日香に叫ぶ。

これから先、どんな世界があなたを待ってるかなんて、誰も知らない。だけど、喜びも悲しみだって、味わいつくしてほしい。まだ人生は始まったばかり。このどうしようもなくも素晴らしくもある世界で、存分に羽ばたいて。

     ×     ×     ×

今回はこんな感じで行ってみました。岩里祐穂さんの詞がとにかく素晴らしい。そのことを
実感しながらの制作でした。歌詞の引用は冒頭部分しかしませんでしたが、歌詞全体を読みつつ
この物語を味わってもらえると、色々ツッコミどころがあるかと思います。

秋口に入るので、次はあの曲かな?
ラベル:Negicco
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2016年09月29日

若葱茶話その四「カナールの窓辺」

若葱茶話も4回目となります。いよいよ10月から新しい動きのツアーが始まるとのことで、
でも特にぽんちゃが不調(原因不明で声が思うように出せないとか。Abema TVで見る限りは
声の響かせ方の問題のようですから、ボイトレの先生に相談だと思います)だそうで、それを
元気づけたいという狙いも、今回に関してはあります。この曲のレコーディングの頃は
絶好調だったの思いますのでね。それでは、お楽しみください。

     ×     ×     ×

この曲を初めて聴いた時は、まだ彼と一緒にいる時だった。だからなのだろう、「幸せそうな曲だね」というトンチンカンな感想を口にしてしまったのだった。本当は切ない失恋の曲だったのに・・・。

Negiccoのことは彼経由で知った。彼がファンだったから私も、という感じだったが、最初の頃は正直そんなにピンとはきていなかった。でも彼の好きなものだから、と思って付き合っているうちにだんだん好きになっていった。でも彼の方は私が熱心になるまでNegiccoについてはアツく語ったりはせず、私は彼のそんなところが好きだったように思う。

彼と付き合ったきっかけは、後輩からの紹介だった。彼は後輩の会社の上司で「絶対に合うと思うから」と引き合わせてくれたのだった。案の定私はすぐに彼を好きになった。なので私の方からアタックしていったのだが、そんな私を彼はすぐに受け入れてくれた。ほどなく半同棲というか、週末はほぼ彼の家に入り浸っていて、そこからデートに出かけるという形だった。

私はそんなに付き合っている人に影響されるタイプではないんだけども、彼に関しては特別だった。ジャズを聴くようになったのも彼の影響だし(といってもアーチストとかは分からなくて、ただあるものを聴くだけ、なんだけど)読書の習慣もついた。空き時間や移動の時にゲームではなく本を読むようになったのは彼の影響だ。また、水族館なんかに行ってもこれまでは「カワイイね」とかで終わっていたのに「こういう発見もあるんだ」と深く観るようになったし、彼以外の人とも感想を語り合うことが楽しいということも分かった。

彼と話していて良かったのは、彼は決して自分の意見を押し付けたり私の意見を否定したりしなかったこと。私の意見を尊重しつつ「それとは別の観方があるんだよ」というのをさりげなく示してくれた。彼自身は折衷主義というか、物事には色んな側面があるということを慎重に見たいという人だったのだ。(その分「自分の意見を強く持てないんだよなあ」と自分の欠点をよく口にしていた)私自身も今は、そうありたいと思うようになっているが、それは確実に彼の影響だ。

Negiccoは彼の部屋でCDを見つけたのが最初だった。(「Melody Palette」が出たばかりの頃だ)「こんなのも聴くんだ」と私が尋ねると「この子達のことを知ってから『アイドルだから聴かない』というのも偏見なんだなあと気づいた」と彼が言って、その言葉が印象的だったのを非常に覚えている。とは言っても大勢で勢い任せに歌っている女性アイドルはそんなに好きになれず、Negiccoとかは彼も好きなんだし、まあいいかなというくらいだった。

私が先にハマったのが声優さんの方だった。花澤香菜さんの「claire」は本当によく聴いた。花澤さんのライブにも一緒に行った。彼はもともとあまりライブとかには行かないそうで、だからデートに行く場所とかは私が主導権を握っていたのだ。付き合う前から共通で好きだった洋楽とかでも、ライブとかはほとんど行ってなかったくらいだった。「友達とか歴代のカノジョに誘われて数回ぐらい。でもそれだと本当に好きなアーチストとかは見に行ってないんだよねえ」とのたまっていたのだ。そんな優柔不断なところが、結局別れてしまう原因になったのかも知れないけども。

私が、というより私も彼も本格的にネギさん達にのめり込むきっかけとなったのは例の「サンシャイン日本海」のリリイベの頃だったと思う。と言いつつも、あの最終日の盛り上がりはTwitterのまとめサイトで後から知ってしまう体たらくで「ヤバイね、これはちゃんと応援しなきゃいけなかったね」と二人で反省したりしたものだった。私自身は祭りに乗り遅れた悔しさみたいな感情も混じっていたのかも知れない。そういうの、大好きだから。そこから彼に「抜き天」の話などを教えてもらい、本格的にハマってしまったのでした。

だから「光のシュプール」の5位は本当にうれしかったし、Perfumeとの再会も涙涙だった。(彼の部屋で一緒に観て、共に涙した)野音にも一緒に行った。その流れで例の「カナールの窓辺」を聴いたのだった。


楽しそうなレコーディング風景のMVに引きずられたのかも知れないけれど、私が最初に口にしたのが、先ほども書いたけど「幸せそうな曲だね」というものだった。それを聞いて彼は「でも別れの曲だよ」と半分冷やかしで言ったんだけども、クスクス笑いながらそんな感想を語り合うその時が、何よりも幸せだった。この後に本当に別れが来て、この曲の切なさを体感するようになるとは知らずに。

別れの話が始まったのは、彼の海外赴任の話が浮かび上がってからだった。年末ごろに彼から「会社のインドネシア支部に転勤になりそうだ」という話を聞いた。その時私は、会社を辞めて彼についていってもいいと思った。というより、会社を辞めて僕についてきてくれ、と彼に行ってほしかった。もう2年以上彼と同棲しているわけだし、いずれは結婚をとお互い考えていたのだから、そのタイミングが今でしょと思っていた。だけど彼はそうでもなかったようで「君の人生を拘束するわけにはいかない。結婚しても仕事を続けてほしいと思っていたし」なんて答えが返ってきた。彼は遠距離恋愛を考えているらしい。
「そんな、遠距離なんて私やだし、なんなら向こうで仕事見つけるよ」
「君は自分の人生をそんなに軽く考えてるの?」
「軽くは考えてないよ。でもあなたなしの人生なんて考えられないし、あなたと一緒に見る風景の方が大事だもん」
「言っとくけど、ずっと向こうに住むわけじゃないからね。多分3年くらい。そのために一回仕事を辞めて、そこからまた戻ったりなんて出来ないでしょ」

そこから色々話し合いをしたし、自分の人生について考えてみたりもした。自分の人生なんて重いテーマには結論なんてつけられなかったけど、今の仕事がそんなにも好きではないんだなあというのは分かった。ただ、他にやりたいことがあるわけでもないし、会社に不満があるわけでない(むしろ自分には勿体ないくらい)のでそこにいるのだ。そんなことは、こういう切羽詰まった状況にならないと分からなかった、というのは情けない話だけども。

彼はどうやら私に自立した女でいて欲しかったようだ。「ようだ」なんて曖昧な言い方になってしまうのは、彼自身はそういう自分の考えを私に押し付けたくなかったから。だから私の考えをまとめるのに協力してくれたし、自分で分からなかったら色んな人に意見を聞いて甘えるべきだと言ってくれたりもした。もし二人にもう少し時間があったら、そういった問題もうまく解きほぐして、二人にとってベストな結論に持っていくことが出来たと思う。だけど、二人には時間がなかった。二人の今後についてきちんと結論をつけられないまま、彼は旅立ってしまったのだった。

だったら彼の言うように遠距離恋愛でいいじゃんと思うかも知れない。あるいは彼の中では未だにそう考えている部分があるのかも知れない。(「君以上の子に出会うことは多分ないから」と言ってくれたし)でも、そんな宙ぶらりんなことになるのなら、一旦距離をおこうと私の方から言い出したのだ。少なくとも当分は会いたくない。だから、連絡もしないで!

ところがいざ、彼がいなくなるとこんなにも辛くなるとは思ってもみなかった。もう、ほとんど毎日泣いていた。ほんの些細なことで彼がいない喪失感に気づき、号泣する。彼の痕跡のあるものを見つけては悲しくなる。その連続だったわけだが、ここ数年私にとって彼はほとんどすべてだったから、どれだけ頻繁に彼の不在を感じたのか、誰も想像できないと思う。

さすがに1か月もすると慣れてきて、いちいち彼の痕跡を感じて泣かなくはなったけど(でも彼がいなくて寂しい気持ちは全然うすれたわけではない)あの「カナールの窓辺」だけは別だった。1回浸ろうとして聴いてみたけれど、辛すぎて最後まで聴けなかった。だって、今の私の気持ちそのまんまだもん。なんで最初に聴いた時「幸せそうな曲だ」なんて感想を抱いたんだろう。それを彼に冷やかされたことを思い出して、また悲しくなって。アルバム『TEA FOR TWO』が出た時も「カナールの窓辺」だけは飛ばして聴いたくらいだった。

「カナールの窓辺」はいなくなった彼の痕跡を求めて思い出の街に行くという歌詞だけども、どうしてそんなことをするのか、最初は分からなかった。自分から辛くなるようなことをするんてMな趣味私にはないし。でも、そうしたくなるほど彼のことが好きなんだと気付いたのは、別れてしばらくしてからも彼の影響が抜けなかったからだ。相変わらず朝にジャズを聴くし、待ち時間に本を読む。そんな自分と以前の自分と比べてどっちが好きかと考えた時(そんな風に考えること自体、完全に彼の影響だけど)今の自分の方が好きだと自信をもって言えると感じた。

いつしか私は、彼との思い出の場所を聖地巡礼するようになっていた。初めてデートに行った水族館。二人でよく散歩した川のほとり。あちこち食べ歩いたけど二人にとってベストワンだったカレー店。時々泣いてしまうこともあったけど、実感したのはこんなにも彼のことが好きだったということ。そして彼といた自分、彼によって変わった自分が誇らしくて好きだ(った)ということ。一緒にいた時よりも好きだという気持ちが強まったかも知れない。今なら「カナールの窓辺」を聴けるかもしれない。

  星が流れて 月が眠る頃
  新しい日が
  もう私を待ってる

久しぶりに聴く「カナールの窓辺」は、ビターでスウィートな味だった。そう、彼との思い出のように。一番最初に「幸せそうな曲だ」という感想を抱いたのは、あながち間違っていなかったんだ。その原因が分かると同時に、一番大事なことを彼にまだ伝えていなかったことに気づいた。

一緒にいてくれて、好きにならせてくれて、ありがとう。

     ×     ×     ×

今回はこんな感じで攻めてみました。いかがだったでしょうか。「この二人、まだ別れて
いないんじゃん」というツッコミもあるかも知れませんが、そこはわざと曖昧にして下さい。
実は、後々の展開も考えているので。

次回は未定。いくつか候補はあるんですけど、まだお話が「降りて」きてないので。
ラベル:Negicco
posted by なんくい at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | この記事はフィクションです | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする