2017年11月23日

祝30周年!エレカシの極私的30曲(30)ベイベー明日は俺の夢

祝エレカシ紅白!ということで連投です。30曲挙げていくこの連載も今回が最終回です。
今回はもちろん、30周年の曲から取り上げます。

エレカシ30周年のアニバーサリー・イヤーに発表された新曲は4曲。7月にリリース
された「風と共に」とそのカップリングの「ベイベー明日は俺の夢」。そして11月に
リリースされた「RESTART」と「今を歌え」というダブルA面の2曲。それぞれが
エレカシの代表的な面を表しているという意味でも興味深いですね。

NHKのみんなの歌に起用というニュース(それこそ「はじめてのボクです」以来!)
で驚かされた「風と共に」はエレカシのポップな面を象徴する曲。ただ非常にスケールの
大きな、未来を感じさせてくれる新たな名曲と言えるでしょう。

そしてカップリングの「ベイベー明日は俺の夢」はロック調ながらポップに開けていく
印象の、これまた素晴らしい曲。サビの短3度上への転調も鮮やかに決まっている
(だから言ってるでしょ、エレカシって器用なんだよ)という意味ではエレカシの
ポップな面を象徴している曲と言えるでしょう。

そして、コアなファン向けと言えるのが「RESTART」と「今を歌え」。といっても、もう
エレカシはそういうコアな面も市民権を得ているんだよな、と感慨深くなるんですが。
「RESTART」はエレカシらしいロックなナンバー。でもBメロの展開なんかは、
楽理フェチな私としても好きなラインですね。この曲も、サビでの大きく開けていく
感じが印象的で、その辺りは今の宮本さんのモードなんですかね。

一方「今を歌え」はスケールの大きなバラード。こういう面も好きな人多いですよね。
私も好きです。今回の30曲の中にもバラードは結構入ってますしね。今回の4曲の中では
一番年輪を感じさせるというか、ちょっと振り返りモードを感じる曲ではありますね。
「MASTERPIECE」の頃のエレカシを思わせる、これが入っていても違和感ないでしょう。
「MASTERPIECE」のモノクロ感よりは少し色づいた印象?

というふうに長年のファンには満足度の高い4曲なんですが、この中からどれを表題に
選ぶか、となると私のひねり趣味が出てしまうのでしょうね。一番知られていない曲を
選んでしまう。ぶっちゃけどれでもいいんですが、個人的に一番好きなのがこの曲と
いうことと、埋もれている曲をなるべく取り上げるというこの連載の趣旨にふさわしい
かな、ということで「ベイベー明日は俺の夢」を選びました。

30周年に紅白も決まり、これからますますたくさんのリスナーにエレカシが広まりそう
ですが、変わらずに長く名曲を生み出し続けてほしい、というのがファンの願いでは
ないでしょうか。おめでとう、エレカシ。そしてありがとう、エレカシ。これからも
よろしく、エレカシ! ということで連載を〆させていただきます。
posted by なんくい at 10:00| Comment(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月21日

祝30周年!エレカシの極私的30曲(29)この円環のなかを

祝、エレカシ紅白出場! いや毎年紅白のセレクションには色々言いたいことが
出てくるんですが、まあ混迷を深める今日のシーンでは誰も正解を出せないわけで
その中で、こういうもうけもんみたいな事態も生じると。でもまあタイミング的
には今年しかないでしょうからねえ。

他にこのブログ的には竹原ピストルさんとかも初出場で、こちらも楽しみですね。
あとはトータス松本さん。なんでウルフルズでないの?という。まあ椎名林檎との
デュエットっということなんでしょうね。

ということで、かなり間をあけてしまいましたが、あと2曲になったこの特集をします。
今回は、宮本さんが病気から復活した時期の曲ということで、この時期もいろいろと
思い入れのある曲はあります。シングルでは「Destiny」なんか好きですし、アルバムも
記事にしましたしね。その中で今回取り上げるのは、シングル「あなたに」のカップリング
に入っている「この円環(わ)のなかに」という、ほとんど知られていない曲でございます。

というのも、この曲、完全なるブルースなんですよ! それもオールド・スタイルの。
私は古い音楽が好きというのもあるんですけども、こういうことをエレカシがやるとは
思っていなかったので新鮮ですね。ウルフルズなら分かるんですけどね。

しかし、そのブルースがまた、非常にハマっているんですよ。ウルフルズもビックリ、と
いうくらい。エレカシってあー見えて実は器用なところがある、という説がありまして。
「Covers」という番組で「赤いスイートピー」をカバーしているのが話題になっていました
けど、音楽的にも色々通っていますし、それをてらいもなく見せてくれるのがうれしい
ですね。まあカップリングでのお遊びでしか聴けないでしょうけども。

紅白でエレカシを知った人には、もちろん表通りというか、彼らの波乱万丈なストーリーと
時期によって揺れてきた音楽性に触れるのが優先なのは言うまでもありませんが、少し
エレカシを知った人には、こういう側面もあることを知って頂きたいです。
posted by なんくい at 10:24| Comment(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月30日

サブスク時代の洋楽楽理解説 #20 Bruce Springsteen「Rosalita (Come Out Tonight)」

なかなか更新できなくて申し訳ないですが、月イチの洋楽楽理解説は律義に更新
しております。今月はボスことBruce Springsteenでございます。

この人は日本では「Born In The USA」のイメージが強い(何なんでしょうねこの
日本での洋楽の80年代スタンダード的な現象。今度考察してみようかな)のですが、
デビュー当時は「ボブ・ディランの再来」みたいに言われていて、言葉をまくし立てる
スタイルが印象的な人なんですよ。日本で言うとヒート・ウェイブなんか近いと思う。

そして彼の音楽性を支えるのがEストリート・バンドという最高なロックンロール・
バンド。といっても、サックスがいたりキーボードが2人(だいたいピアノとオルガン)
いたりとロックンロールの典型からは異色(いやむしろ、古きロックンロールの姿を
体現していると言えないか)の編成なんですけどね。

全盛期の彼らは6時間もの長さのライブをやるなんて話もあり、その圧倒的なライブは
観る者全て(本っ当に全て!)を興奮させたと言います。そのライブでの魅力が凝縮
されているのが彼の2ndアルバム「The Wild, The Innocent & The E Street Shffule」
に収録の「Rosalita (Come Out Tonight)」でしょう。



これがライブ・テイクになっている辺り「分かってるなあ」という感じがします。最後
の方なんか、最前列の女のお客さんがボスに抱き着いて大変なことになってますね。
この曲、あまりに盛り上がり過ぎて危険だから一時期封印してたなんてウワサも聞いた
ことあるんですが、真偽のほどは定かではありません。

この素晴らしいライブテイクを使って解説してもいいのですが、でもここでは一応
レコーディングの音源に従って解説していきます。これも、味わい深いんですけどね。
(当然、ライブテイクの方がアツいに決まってるもん)

最初、ギターのアルペジオから始まります。8小節間、その間にドラムのブレイク、
ハモンドオルガン、サックスが入ってきて、7〜8小節目では付点8分音符で引っ張って
あの印象的な、サックスをフューチャーしたイントロに突入します。

ここのコードはF→B♭→F→Cという一→四→一→五という、スリーコードなんですが
ロックというよりラテンなんかでよく見かけるコード進行です。こういうシンプルなコード
に胸躍る8ビート。ただ音源をよく聞くとイントロからの流れであるギターのアルペジオが
いいアクセントになっていることに気づきます。

そのコードの流れのまま、バースに入ってきます。ここはF→B♭→F→Cという2小節の
回しを8回、つまり16小節の長さですね。このパートを、ここではAと呼んでおきます。

次のパートをどう呼べばいいのか議論のしどころですが、一応第1ブリッジという解釈で
いいのでしょうが、ここではBとしておきます。(JポップのBメロとは少し違いますが)
ここのパートはコードを拾っておきます。
 |B♭|B♭|Am|Dm|C|C|B♭|B♭|
 |Csus4・C|Csus4・C|Csus4・C|Csus4・C|

12小節といういびつな長さなんですよ。ここは(クラレンス・クレモンズのサックスで)上がり
つつもコードの変化で切ない色を入れる1〜4小節目、そしてドラムがブレイクする5〜8
小節目、そこから再び上げていく9〜12小節目という役割分担ですね。ここで上手いと思う
のが5〜8小節目で一旦下げておくところ。ベースとキックドラムが「ターンタ・ターン・
タッタッタ・ターン」というリズムを刻み、ちょっと遊んでいる感じを出す。そこから
ドラムは細かいフィルインを含みつつ上げていく。ここはサステインかを挟んで同じドミナント
のコードをしつこいほど引っ張っていくんですが、そのコードチェンジに呼応したサックスが
だんだん上がっていくようにフレーズを弾いていてウマいなあと思いますね。

2コーラス目もA→Bは同じ長さで続きます。もちろんサックスが雄弁になったり1回目より
盛り上がるようになっているわけですが。そこに続いてコーラス的なパート(ここをCと
しておきます)が始まります。ここはF→B♭→Cという一→四→五というコードでの
2小節の繰り返しで、歌のパートで4回、サックスソロで4回の8回16小節続きます。

そして3たびAに行くのですが、ここが少しだけ違うところ。ここまでは8回繰り返されて
いたパートが、6回までは変わらないのですが、7回目から少し変わっているんです。
それはこういう風にです。
 |F・B♭|F・C|B♭|B♭|C|C|
そしてここからBのパートに流れていくのです。まあ趣としてはBのパートが少し早く始まる
という感じなんですね。でもまあ、ここから少し破調が始まっていくわけです。

そしてBはそのまま進み、Cも歌の4回しまでは同じですが、その後、第1のクライマックスが
始まります。レコーディングの音源ではハモンドオルガンが細かいアルペジオで盛り上げて
いくパートです。
 |C|C|D♭|D♭|D|D|E♭|E♭|
 |E|E|E|E|E|E|E|E|
要は半音ずつせり上がっていくというパートですね。そしてEのコードで引っ張って引っ張って
強引に盛り上げていくわけです。ライブテイクを見たら、ここでサステインを使ったりして
さらにブラッシュアップが図られているのが分かります。

こうして緊張感がマックスになって次に、サックスによる印象的なフレーズが入ってきます。
ここはブレイクとして4回、そしてF→B♭→C(Cのところのコードですね)が入って4回。
そのままコーラスに入るのかなあと思いきや、ここで長い間奏も意外と暗転していくのです。
というのも、ここでコードがこうなります。
 |F|B♭/F|Fmin7|B♭/F7|F|B♭/F|Fmin7|B♭/F7|
なんと、マイナー展開するんですね。ここはブルージーでカッコイイパートですが、次の
第2ブリッジ(Dとします)の暗転→カタルシスを準備する、曲の構成的には大事な部分
なんですよ。

そして、再び歌に入るDのパート。少し長いので、区切って解説しますね。
 |C|C|Gm|Gm|Dm|Dm|Am|Am|
 |C|C|
8小節はじっくり聴かせるパート。コードもマイナー展開しています。そこに挟まる
2小節のリズミックなパート(9〜10小節目のCのコードのところ)ここがアクセントに
なり、さらに静かなパートへ。
 |Gm|Gm|Dm|Dm|Am|Am|
 |B♭|C|F|Am|
ここの前半6小節は、実は前の2小節につながっていて、ちょうどその前の8小節の繰り返し
になっている部分。そこをあえて、ここで分けて表示したのは、9〜10小節目のインパクトを
際立たせたかったからです。
そしてその8小節の繰り返し2回の後に、その展開が一旦解決(コード的に)して次のパートに
つなげるための小休止をします。(ここは一旦緊張感がほどける部分ですね。まあこういう
ところがないと、正直持たないですしね)

次からだんだんと盛り上がっていく(反転してカタルシスになるパート)ところです。
 |Dm|B♭|
 |C|C|C|C|C|C|
 |Gm|Gm|E♭|B♭|
 |Csus4・C|Csus4・C|Csus4・C|Csus4・C|

最初の2小節はドラムブレイクにサックスの伸ばしが入って、ここから盛り上げっていく
という流れを見せつつ、次の6小節でドラム以外がブレイクになり、有名なリフレイン
(ライブでは観客が歌って盛り上げるところ)になります。ここ、物語的には相手から
自分の絶望的なところを指摘されるパートで、ここをこういうつくりにしているのは
それを戯画的に聴かせようという意図があるのでしょう。そこから再び演奏が入り、
段々と盛り上げていくパートなんですが、ここで初めてE♭のコードが登場したりします。
ここが、私がBruce Springsteenをタマラナく好きなところでして、結構巧みなんですよ。
不器用なようでいて、メチャクチャ音楽的に達者なんですよね。

そして、例のサステインで上がっていくパートを経て、4たびAのパートへ突入します。
ここのAのパートはいつも通りなんですが、今度は続くBのパートが少し変わります。
 |B♭|B♭|Am|Dm|C|C|B♭|B♭|Am|Dm|
 |Csus4・C|Csus4・C|Csus4・C|Csus4・C|C|C|
4小節〜6小節〜6小節というつくりですね。中盤の6小節は歌詞が引き延ばされたから
でしょう。そして最後の6小節はもう少し引っ張っているわけですが、最後の小節であの
有名なブレイクが登場します。ここもクライマックスの一つでしょうね。

そしてコーラス(Cのパート)が歌4回し、サックスソロ4回しを経て、さらに盛り上がる
パート、例の「ハッハッハッハッ」のところですね。ここからはイントロと同じコード進行
つまりF→B♭→F→Cの繰り返しになります。そして最後に盛り上げておいて、いかにも
ロックっぽくFのコードの伸ばしで終わります。

Bruce Springsteenという人は生粋の詩人でもありまして(ディランの後継者て言われてた
んだもんな)、その絶望から希望へと至るストーリーテリングの見事さも語るべきなのですが
それは色んな方がやっていらっしゃるので、私はあまり語られていないボスの楽理的魅力を
今回語らせて頂きました。盛り上がる曲には、やはり構成の妙があるんですね。

しばらくロックを続けようかと思いましたが、来月は気が変わって10ccに行きます。それも
ゴドレイ&クレーム脱退後の名曲「The Things We Do For Love」を楽理解説させて頂きます。
知らない方は、是非予習しておいて下さいね。
posted by なんくい at 23:44| Comment(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする