2017年08月27日

サブスク時代の洋楽楽理解説 #18 Ash「Sometimes」

月終わりの洋楽楽理解説。今月は90年代ものですよ。

Ashは北アイルランド出身のロックバンド。いわゆるブリット・ポップに
位置付けられるバンドですが、そのテのバンドの中でも屈指のソング・
ライティング能力で知られているバンドです。

バンドの魅力は何といってもTim Wheelerの書く楽曲。メロディ・メイカーと
しては当代一といっていいのではないでしょうか。個人的には草野マサムネに
並びうるとまで思っています。(これが最大級の賛辞だということは、この
ブログを読んでいる方ならお分かりでしょう)

今回取り上げるのは「Sometimes」。名盤「Free All Angels」に収められている
バラード・ナンバーです。ただApple Musicにはこのアルバムは入っていないので
2002年に発売されたベスト盤で聴けます。一応公式動画も公開されていますので
貼っておきます。



リード・ギターの切ないフレーズが印象的ですよね。このフレーズはコーラスの
メロディでもあるので、このメロディの魅力がこの曲の大きなポイントの一つと
言えましょう。そこに切り込む前に、先ずはイントロのコードから押さえましょう。

 |AinE・Dmaj7|Dmaj7・AinC♯|AinE・Dmaj7|Dmaj7・AinC♯|
 |Dmaj7|E|Dmaj7|A・E|Dmaj7|E|Dmaj7|A|

なんとこの曲、3コードなんですよ。途中のブリッジで三とか六を使いますが、
それ以外は一・四・五で通す。ただ、イントロで転回形を使ったり、四のコードが
メジャーセブンだったり、それなりに凝っていたりするのですが。

そしてかのリードギターのフレーズ。このフレーズのキモはC♯の音なんですよ。
これがDのコードに対しては(メジャー)セブンスの位置であり(この曲でDの
コードでメジャーセブンを多用するのはそのせい)Eのコードに対しては6度の位置。
いや、13度と捉えてもいいのですが、ここでは6度の位置でドミナントのコードに丸みを
与えていると取りたい。Dの位置でシャープな彩りを与え、Eの位置では丸みを与える。
そんなふうにC♯の音が大活躍しているのがこの曲なんです。

そして、バースに入ります。ここのコードはこうなっています。
 |A・D|E・A|A・D|E・A|A・D|E・A|A・D|E・A|
 |A・D|E・A|A・D|E・A|A・D|E・A|A・D|E・A|

はい。一→四→五→一のコードですね。ただEのコードでは多くで6の音
(これがC♯)が入っていたり、Dでも途中からメジャーセブン(これもC♯)
っぽくなっていたりします。そして、メロディでも最初はC♯の引っかけが
Eのコードで入り、後半では小節前半のAとEのコードで入る、という仕組みに
なっています。ここではDのコードのところでメロディはC♯に行きません。
それはコーラスに取ってあるのです。

そして、コーラスに入るのですが、ここの入りで突然アウフタクト気味に4分の2拍子の
小節が挿入されます。2拍分余計に入る、という非常にトリッキーな展開なんですよ。
この2拍分(半小節分)コーラスの入りがずれることで、コーラスのメロディへの
インパクトが強まる効果(そこに耳がいきますからねえ)を高めています。

そして、その4分の2も含めて、コーラスのコードはこうなっています。
 |2/4E|4/4Dmaj7|E|Dmaj7|A・E|Dmaj7|E|Dmaj7|A|

そして、イントロでリードギターが奏でていたフレーズがコーラスのメロディ。
これは、Eのコードのところでアルペジオ的なフレーズになり、Dのコードで
C♯のワン・ノートで押す、という対比になっています。そしてEのところの
アルペジオも最後にC♯の音になることで、E6の音の丸いニュアンスが出る。

後、言及しておきたいのがDコードでC♯で押していたのが、Eのコードに変わる
ところでG♯に降りるところ。この音は、Eのコードでは3度という安定した位置
にあるのですが、Amajor全体としてはシの位置なので不安定(それゆえ導音になる
わけですけどね)、そこへ完全4度降りて至るという音の動きの面白さも相まって
この箇所のインパクトあります。

今言ったような効果もあって、このコーラスは非常に切なく聞こえる(音の引っかかり
がある分、耳に残るんですよね)わけですが、そこに向けてインパクトを蓄積する
ような楽曲のつくりは見事です。

そして2コーラス目のバースは半分の長さになり、コーラスの後にブリッジがくっついて
きます。そのブリッジのコードはこうなっております。
 |D|E|C♯m|F♯m|D|E|D|D|

なんとここで、四→五→三→六に行くんですね。いわゆるJポップの王道進行ですわ。
ただここも、コードを動かして景色を変える効果だけで、あまり切なさを増すようには
作られていません。その証拠に、ここのメロディはほぼ例のC♯のワン・ノートで押して
いまして、しかもそのC♯の音はC♯mにとっては1度、F♯mにとっても5度とふつうの
当たり方をしているからです。つまりここでは、意図的におセンチ成分を押さえている。
泣きのコードに行きながら、あえてメロディで泣くのを抑えているのだと考えます。

それよりも印象に残るのはここの部分の終わり方ですね。Dのコードを伸ばして、四のコード
で終わるようにしている。それによって、余韻を残すような効果があります。そしてここは、
最後への伏線でもあるんですけどね。

この後、今のJポップの落ちサビ気味にバースが1回繰り返され(2コーラス目と同じ
長さです)そこからコーラスのコードでギターソロが1回、そこから繰り返されて
最後にコーラスが1回。そして、1行返しよろしく、最後のフレーズが繰り返される
のですが、そこでのコードがE→Dのまま、余韻を持って終わります。ここは、ブリッジの
終わり方とパラレルになっているわけで、その辺の折り目正しさも、Tim Wheelerらしい
なあと思います。

Tim Wheelerの書く曲は、コードはシンプルなものが多いのですが、メロディの当たり方が
独特(プラス、音形もしばいばユニーク)で、そこが耳に残るインパクトを生んでいる。
それが、この曲の解析で少しでも示せたのではと思います。

次回もロックものに。Paul Simonの「Kodachrome」に挑戦します。
ラベル:楽理解説 Ash
posted by なんくい at 17:09| Comment(0) | 音楽理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月20日

祝30周年!エレカシの極私的30曲(28)七色の虹の橋

今回は先ず、ちょっと面白い情報から。「うまい棒」という10円のお菓子が
ありますよね。その「うまい棒」のキャラクター「うまエモン」(棒国民的
キャラのパクリですね)の妹分「うまみちゃん」(これも!)が歌手デビュー
という展開に。それがコチラ。



あれ、この声どこかで聞き覚えが・・・という方もこのブログに来られる方には
結構いらっしゃるでしょう。その答え合わせ、じゃないですけども、「実写版」が
公開されています。(正体はUMAINAといううまみちゃんファンの声優さんとのこと)



これ、全然知らない人のためにヒントだけ言っておきましょうか。大阪あたりにいる
歌の上手いアイドルさんですね。これと名前とで、察してくださいね。(ちょっと
調べればすぐに分かるでしょうけど)その「大阪のアイドル」さんも、これきっかけで
名前が知れてもらえればいいなあ、と思って、微力ながら宣伝させて頂きました。

では本題に入りましょう。めちゃくちゃ久しぶりのエレカシです。と言ってもずっと
連載してきてあと今回も含めて3回なんですけども。前回は「約束」という曲をアツく
語って、今回は、その「約束」も収められている「MASTERPIECE」を特集します。

しかし「MASTERPIECE」とは大上段に来たね。自ら「傑作」と名付けるなんて。いやいや
このアルバムは、そんな小さな意図で「傑作」と名付けられた訳ではないのです。

そうでなく、誰の人生もMASTERPIECE(傑作)なのだ、という意図でつけられたアルバム・
タイトル。つまり、市井の人々の日々の生活を至上のものとして照らそうという、
徹底的に私達の側に立ったアルバムなんです。お高く留まったアルバムじゃないんです。

アルバムのトーンも、近作のバラエティを感じさせるトーンから一転、モノトーンな印象が
強い、アルバム全体に統一した色彩を感じさせるものとなっています。曲自体は多彩な
曲があるんですが。

そして、そのアルバムの内容を象徴している楽曲が「七色の虹の橋」なんです。この曲は
エレキギターのみの弾き語りで、穏やかなトーンで過去の恋人との日常が描かれる。
そして最後には「思い出はセピア色なんかじゃあない/明日へ向かう七色の虹の橋」と
力強く歌われる。まるで、前回取り上げた「約束」にも通じる意志の強さを感じますね。
実際、思い出をノスタルジーにするのも未来への端にするかも、その人の意思次第だと
思います。

そして、アルバムのテーマ「誰の人生だってMaster Piece」というのも、この曲の最後の
方で歌われるのですが、そのテーマの出し方も独特なんですよ。そのフレーズが、主人公が
かつて君に向かって冗談半分に言った、という体で出てくる。こういうさりげなさも、
エレカシの表現の深化というのを感じさせますね。

あと2曲ですね。1曲は変化球で行きます。
posted by なんくい at 14:27| Comment(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月12日

FSD絡みの音源を何曲か紹介

すみませんねなかなか更新できずに。またちょっとごぶさたしますので、
ちょっと大急ぎで何曲か紹介する記事をドロップしますね。

フリースタイル・ダンジョン、皆さん観てますか? すごいことになって
いますよね。私も番組のファンなのでいくらでも語れますけども、初代の
モンスター達が卒業し、新しいモンスターが徐々に発表されてきている
という現在、新旧モンスターや、番組で名をはせた人達の音源をいくつか
紹介します。いや、バトルも盛り上がるけども、是非音源も聴いてほしいな。

最初は、フリースタイル・ダンジョンの中にライブ・コーナーがあるんですけど、
そこで見てぶったまげた輪入道の「徳之島」晴れてアナログ・リリースです。
パチパチパチ!



いかがですか? ちょっとウルッと来ちゃいますよね。でも、実はライブテイク
の方がこれの10倍くらいいい(生で聴くともっといい、というウワサ!)ですから、
是非そちらも探して聴いてみてくださいね。

輪入道さんは、新モンスターかも知れないと取りざたされていますが、果たして?
それは、間もなく分かります。(でも以前でも「隠れモンスター」などで出てます
けどね)

続いては、こちらは新モンスターとして既に発表された呂布カルマさん。彼がモンスター
のオファーを受けるとは思っていなかったので、ちょっと胸アツですね。



非常に深い、考えさせられる世界観ですよね。バトルで冷静に相手の弱点を突く
呂布さんもいいですけども、個人的にはこういう文学的な彼がタマラナイですね。

コントロバシーなトラックで言えば、今年リリースされた旧モンスターDOTAMAさんの
この曲が、やはり出色でしょう。



旧モンスターの間では戦略家として、挑戦者の情報などを調べ上げて仲間たちに
レクチャーしていたなんてアツい面も持つDOTAMAさん。今後はこういう音源でシーンに
そのクレバーさを存分に発揮して頂きたいですね。期待大です!

続いては、ラスボス般若さんとの熱闘も印象的だったNAIKA MCさん。バトルで般若さんに
「音源を出せ」と言われたその公約を守るかのように、激カコイイ新譜を出しましたよ。



バトルでは熱さがウリの人ですが、音源は一転クールで、こちらのNAIKAさんもいいですね。

続いては、こちらも新モンスターとして発表された裂固さん。若くして非常な苦労人である
彼ですが、最近の活躍は正しく快進撃というに相応しいでしょう。こちらの曲も、今年早々
iTunesのHip Hopチャートで1位になっています。



非常に王道な魅力を持つラッパーですが、そんな彼の表現が新世代として若いリスナーを
どう掴んでいくのか。(俺らおやじ世代には間違いなく支持されるでしょう)注目したいです。

バトラーだけでなく、審査員にも光を当てましょう。某深夜番組で意味不明ないじられ方を
しているwwKen The 390さん。(佐久間という本名から採っているそうですこの名前)。
間違いなくルックスも良い、女の子受けしそうな、でも中身は本格派のラップをどうぞ。



彼の持ち味は何といっても切れ味。そのスピード感(ただ早口という意味ではないよ。リズム感
はんぱないっしょ)は、一気に人気を博してもおかしくないと思いますね。

東のKENさんに対して西のERONEさんを挙げないわけにはいかないでしょう。彼の所属する
韻踏合組合の音源をどうぞ。(ERONEさんは最後のパートです)



今回あえてフューチャリングものを外しているので、このラインアップで聴けば
そのラッパーの多様性が楽しいかも知れませんね。ある種の猥雑さとタイトさを
両方強く感じさせてくれます。

最後は、まさかの残留(いや他に替えがいないですもんね!)ラスボス般若さん。
音源でもラスボスっぷりを満喫させてくれます。



いかがだったでしょうか。バトルが好きな方には、少しでも音源に興味を持って頂けると
うれしいです。ラップに興味ない人も、これだけ揃えれば何か引っかかってくれるのでは
ないでしょうか。日本語ラップは、まだまだ深化する!!!!!
posted by なんくい at 22:38| Comment(0) | 音楽とは | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする